最新記事

医療

トランプ、新型コロナウイルスめぐりワクチン開発の独企業に触手 独当局は阻止に躍起

2020年3月16日(月)12時20分

ドイツ政府は、新型コロナウイルスのワクチン開発を手掛ける国内企業「キュアヴァク(CureVac)」について、研究開発拠点の誘致に向けた米政府の動きを阻止しようと躍起になっている。写真はワクチンの研究にあたる同社社員。12日撮影(2020年 ロイター/Andreas Gebert)

ドイツ政府は、新型コロナウイルスのワクチン開発を手掛ける国内企業「キュアヴァク(CureVac)」について、研究開発拠点の誘致に向けた米政府の動きを阻止しようと躍起になっている。

独紙ウェルト日曜版によると、トランプ米大統領は同社を誘致するため、資金支援を提案。これに対抗して独政府も国内にとどまらせるために支援を打ち出しているという。

グレネル駐ドイツ米国大使は「ウェルトの記事は誤りだ」とツイッターに投稿した。

米政府当局者は「この報道はかなり事実を誇張している。米国は解決策を提供できると主張する企業全てと対話を続けるつもりで、解決策が見つかれば世界と共有するつもりだ」と強調した。

独保健省の報道官は「独政府は新型コロナウイルスのワクチンと有効物質がドイツと欧州で開発されるよう図ることに強い関心がある」と述べた。「このため、政府はキュアヴァクと集中的に対話している」とした。

ウェルト日曜版によると、独政府筋は、トランプ大統領が同社の研究開発成果を独占しようとしており、ワクチンを「米国が独り占め」できるよう躍起になっていると語った。

ドイツのゼーホーファー内相は記者会見で、政府の新型コロナ危機対策委員会が16日にキュアヴァクの問題について協議すると述べた。

同社は15日に出した文書で、「現在出回っている買収のうわさを否定する」と表明。

同社の大株主、ディートマー・ホップ氏は、保有株を売却するつもりはなく、同社には「特定地域のためではなく、全世界の結束を支える」ために新型コロナのワクチンを開発してほしいと表明した。

同社のウェブサイトによると、ダニエル・メニケラ最高経営責任者(CEO)は今月に入ってトランプ大統領、ペンス米副大統領、ホワイトハウスの新型コロナウイルス対策本部のメンバー、製薬会社の幹部らと会合を開き、ワクチンについて協議した。

同社はまた、2015年と18年にマラリアとインフルエンザのワクチン開発で株主である米ビル・アンド・メリンダ・ゲイツ財団から金融支援を得ている。

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2020トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

【関連記事】
・新型コロナウイルスでマニラ事実上の首都封鎖 初日の検問所には軍も動員、テロ警戒か
・韓国、新型コロナウイルス新規感染が2桁に減少 入国者への対策強化へ
・イタリア、新型コロナウイルス感染者1.7万人超 死者1266人で前日から25%増


20200324issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2020年3月24日号(3月17日発売)は「観光業の呪い」特集。世界的な新型コロナ禍で浮き彫りになった、過度なインバウンド依存が地元にもたらすリスクとは? ほかに地下鉄サリン25年のルポ(森達也)、新型コロナ各国情勢など。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

7月消費者態度指数は前月比0.8ポイント低下の33

ビジネス

オープンAI、売上高が年換算で120億ドルに=報道

ワールド

米韓が貿易協定に合意、相互・車関税15% 対米投資

ビジネス

伊プラダ上半期は9%増収 ミュウミュウ部門が好調
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ関税15%の衝撃
特集:トランプ関税15%の衝撃
2025年8月 5日号(7/29発売)

例外的に低い日本への税率は同盟国への配慮か、ディールの罠か

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 2
    いま玄関に「最悪の来訪者」が...ドアベルカメラから送られてきた「悪夢の光景」に女性戦慄 「這いずり回る姿に衝撃...」
  • 3
    枕元に響く「不気味な咀嚼音...」飛び起きた女性が目にした「驚きの光景」にSNSでは爆笑と共感の嵐
  • 4
    日本人の児童買春ツアーに外務省が異例の警告
  • 5
    【クイズ】1位は韓国...世界で2番目に「出生率が低い…
  • 6
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
  • 7
    一帯に轟く爆発音...空を横切り、ロシア重要施設に突…
  • 8
    M8.8の巨大地震、カムチャツカ沖で発生...1952年以来…
  • 9
    街中に濁流がなだれ込む...30人以上の死者を出した中…
  • 10
    「自衛しなさすぎ...」iPhone利用者は「詐欺に引っか…
  • 1
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 2
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの習慣で脳が目覚める「セロ活」生活のすすめ
  • 3
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜つくられる
  • 4
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経…
  • 5
    航空機パイロットはなぜ乗員乗客を道連れに「無理心…
  • 6
    中国が強行する「人類史上最大」ダム建設...生態系や…
  • 7
    「様子がおかしい...」ホテルの窓から見える「不安す…
  • 8
    【クイズ】1位は韓国...世界で2番目に「出生率が低い…
  • 9
    タイ・カンボジア国境で続く衝突、両国の「軍事力の…
  • 10
    中国企業が米水源地そばの土地を取得...飲料水と国家…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 3
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 4
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 5
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの…
  • 6
    「細身パンツ」はもう古い...メンズファッションは…
  • 7
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜…
  • 8
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップ…
  • 9
    ロシアの労働人口減少問題は、「お手上げ状態」と人…
  • 10
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中