コラム

トランプ米大統領が再選されるワケ

2017年12月26日(火)11時40分

トランプはハートをつかむ達人(写真は米軍のサンタ追跡に関して子供たちからの問い合わせに応じるトランプ) Carlos Barria-REUTERS

<16年大統領選では見事に予想を外した僕だけど、有権者のハートをつかむトランプの作戦を見てみると......>

Learn from Your Mistakes(失敗から学ぶ)が僕のモットー。2016年11月に決めた。

米大統領選の前、あっちこっちで「ドナルド・トランプが負ける!」と大きな声で予測を口にした。政治経験がない。専門知識もない。組織もない。党の重鎮からの支援もない。信頼性も常識も品もない。そんなトランプが勝つはずはないと見た。冷静に分析したにもかかわらず、予測が外れ、選挙の翌日、あるテレビ番組でテリー伊藤さんに頭を丸められそうになり、土下座する羽目になった。

そんなことが二度とないように、次からは冷静な分析をやめることにした!

ある意味、これは正解だろう。コメンテーターがいくら頭を使って分析していても、多くの有権者は頭脳ではなく、ハートで投票してしまう。だから、国民の感情の操り方がうまい候補こそ当選するのだ。そしてハートをつかむ達人といったら、やはりトランプの右に出るものはない!

もちろん、多くの人に嫌われているのも事実。ギャラップ社によると、現在の支持率は36%。就任してから1年弱の数字としては、歴代大統領の中で最下位。スローガンにするなら、アメリカ・ワースト!

でもロイター通信が伝えているように、投票しそうな人の間での支持率が最も高いし、前回トランプに入れた人の85%は次回も彼に投票するという。しかも、就任からの1年弱で支持者の熱はますます上がっているようだ。そのカギとなるのは、Single Issue Voter作戦だと、僕は見ている。

Single issue voter(1つの問題で投票を決める人)は、お気に入りの問題に関しての政策や発言だけを候補の審査条件にする。その問題について納得していれば、ほかの政策も、候補の不祥事や不道徳なども気にしない。そう考えると、現実的な政策が少ない上、不祥事や不道徳が目立つトランプ大統領にとっては、この作戦を取るというのはとても賢い判断である。

プロフィール

パックン(パトリック・ハーラン)

1970年11月14日生まれ。コロラド州出身。ハーバード大学を卒業したあと来日。1997年、吉田眞とパックンマックンを結成。日米コンビならではのネタで人気を博し、その後、情報番組「ジャスト」、「英語でしゃべらナイト」(NHK)で一躍有名に。「世界番付」(日本テレビ)、「未来世紀ジパング」(テレビ東京)などにレギュラー出演。教育、情報番組などに出演中。2012年から東京工業大学非常勤講師に就任し「コミュニケーションと国際関係」を教えている。その講義をまとめた『ツカむ!話術』(角川新書)のほか、著書多数。近著に『パックン式 お金の育て方』(朝日新聞出版)。

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