コラム

ジャニー喜多川の性加害問題は日本人全員が「共犯者」である

2023年05月23日(火)21時24分

女性の「14人に1人」が強制性交等を経験

私自身、これまで友人や知人など何人かの女性たちから、性被害の経験を聞いたことがある。聞かされたことがある、と言ったほうが正確かもしれない。電話やLINE、あるいはごく少人数の飲みの場などで、「そういえばさあ...」という具合にその人たちは語り始めた。

私に何ができるわけでもなく「え、まじで」「それ、どうにかできないの?」「何か証拠ないかなあ?」などと返答したりしたが、話を聞けば聞くほど「どうすることもできない」という結論に至った。被害を訴えることで、かえって別の不利益を被る恐れもあった。全員が、泣き寝入りをしていた。

警察庁キャリア官僚で慶應大学教授の小笠原和美(当時、現在は群馬県警本部長)が2022年、都内にある電車通学の高校で772人を対象にアンケートを取ったところ、女子生徒のおよそ4人に1人が痴漢被害を経験していた。被害に遭った生徒のうち警察に相談したのは、わずか6%だった。

また、2020年に行われた内閣府の調査によると、回答者の25人に1人、女性に限ると14人に1人が強制性交等(無理やりの性交、肛門性交または口腔性交)の被害経験を持っている。14人に1人という数字は、女性の給与所得者の中で、年収600万円以上の人と同じぐらいの割合である。

つまり日本社会において性被害は、私たちが思っているより遥かにありふれた、どこにでもある事象なのである。にも関わらず「性暴力被害者は特殊な人」「性被害は恥ずべき稀有な経験」という思い込みが、多くの人を苦しめ孤立させている。言い換えれば、加害者たちを喜ばせている。

しかも、日本は性犯罪を立証するハードルが諸外国に比べて高く、被害者にとって不利だという。もしも私が性犯罪者であったなら、「性加害者フレンドリー」な日本の現状に心から感謝し、思う存分、性暴力を繰り返しているだろう。

プロフィール

西谷 格

(にしたに・ただす)
ライター。1981年、神奈川県生まれ。早稲田大学社会科学部卒。地方紙「新潟日報」記者を経てフリーランスとして活動。2009年に上海に移住、2015年まで現地から中国の現状をレポートした。現在は大分県別府市在住。主な著書に『ルポ 中国「潜入バイト」日記』 (小学館新書)、『ルポ デジタルチャイナ体験記』(PHPビジネス新書)、『香港少年燃ゆ』(小学館)、『一九八四+四〇 ウイグル潜行』(小学館)など。

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