焦点:米の新たな対中関税、メキシコやベトナム経由で迂回の恐れ
バイデン米政権は14日、米国の産業を守る目的で、電気自動車(EV)、半導体、医療用製品など中国からの輸入品に対する関税を大幅に引き上げると発表した。これにより、中国製品が関税を逃れるためにメキシコやベトナムなどを経由して米国に流入する動きが加速する可能性が高いという。写真はバイデン大統領。米ホワイトハウスで13日撮影。(2024年 ロイター/Elizabeth Frantz/ File Photo)
David Lawder
[ワシントン 14日 ロイター] - バイデン米政権は14日、米国の産業を守る目的で、電気自動車(EV)、半導体、医療用製品など中国からの輸入品に対する関税を大幅に引き上げると発表した。だが、これにより、中国製品が関税を逃れるためにメキシコやベトナムなどを経由して米国に流入する動きが加速する可能性が高いという。
米政府高官や専門家は、メキシコなどを経由した、あるいはメキシコなどで若干加工された中国製品の輸入を遮断する強力な措置がなければ、安価な中国製品は引き続き米国市場に流入することになるとみている。
コーネル大学教授で、国際通貨基金(IMF)の中国部門責任者だったエスワー・プラサド氏は「新たな関税は中国からの輸入を締め出すかもしれないが、その輸入の多くが関税対象外の国を経由して迂回される可能性がある」と指摘。特にメキシコとベトナムは、コストが安く近いため、米中貿易摩擦の激化の恩恵を受けているとし、米国の「怒り」を回避する必要があると語った。
第1・四半期の米貿易統計では、中国からの輸入が1000億ドルに満たないのに対しメキシコからの輸入は1150億ドルを超え、対米輸出のトップに躍り出た。
こうした中、メキシコから米国に輸入される鉄鋼製品の増加や、中国EV大手の比亜迪(BYD)がメキシコ工場の建設地を探していることを受け、メキシコが米関税を回避するための中国製品の積み替え拠点になる懸念が高まっている。ロイターは先月、米当局者がメキシコに対し、中国自動車メーカーへの投資優遇措置の適用を拒否するよう圧力をかけたと報じた。
米通商代表部(USTR)のタイ代表は記者団に、メキシコと中国との貿易関係を懸念しているとし、関税逃れの問題を回避するための今後の個別の取り組みに「注目してほしい」と述べた。
メキシコは貿易に関する米・メキシコ・カナダ協定(USMCA)の下、米国の関税がほぼゼロという恩恵を受けている。一方、ベトナムについては米商務省が「市場経済国」としての認定を検討しており、認定されれば同国からの輸入品に対する反ダンピング関税が軽減される。
USTRのキャラ・モロー上級顧問は対中関税発表に先立つロイターのインタビューで、USTRは中国産鉄鋼・アルミニウムの積み替え増加を抑える方法をメキシコ側と交渉してきたと語った。
バイデン政権は今回、1974年通商法301条に基づき、鉄鋼関税を7.5%から25%に引き上げると発表したが、多くの中国鉄鋼製品には他に25%の国家安全保障関税と3桁の反ダンピング・反補助金関税もかけられている。
米国当局はメキシコに対し、USMCAは北米の統合と競争力を促進するためのものであり、「中国に裏口を提供するためのものではない」と明言している。
モロー氏は、USTRはメキシコと鉄鋼・アルミニウム反ダンピング関税や、鉄鋼とアルミニウムの輸出入の監視強化など難しい交渉のステップについて議論しているが、メキシコ政府関係者も中国の過剰生産を自国経済への脅威と見なしていると述べた。
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