ニュース速報

ワールド

中国軍機18機が台湾識別圏に侵入、海峡付近で演習 米高官訪問けん制か

2020年09月19日(土)04時06分

 9月18日、台湾国防部は、中国軍の戦闘機18機が同日、台湾海峡の中間線を越えて台湾の防空識別圏に入り、台湾空軍機がスクランブル(緊急発進)したと発表した。写真は中国の国旗。4月に北京で撮影(2020年 ロイター/Thomas Peter)

[北京/台北 18日 ロイター] - 台湾国防部は18日、中国軍の戦闘機18機が同日、台湾海峡の中間線を越えて台湾の防空識別圏に入り、台湾空軍機がスクランブル(緊急発進)したと発表した。台湾では前日から米政府高官が訪問しており、18日は蔡英文総統と会談する予定。中国国防省は18日から台湾海峡付近で軍事演習を開始したと発表していた。台湾総統府は中国に自制を求めた。

中国は米国と台湾の関係強化の動きに神経をとがらせている。

米国務省のクラック次官(経済成長・エネルギー・環境担当)が17日に台湾に到着。18日に蔡総統と会談し、19日には李登輝元総統の告別式に参列することになっている。中国外務省は17日、クラック次官の台湾訪問に関し「必要な対応」をする方針を示していた。

中国国防省の任国強報道官は18日の会見で、人民解放軍の東部戦区が参加し台湾海峡の近くで演習を実施していると明らかにし「台湾海峡における現状への対応で、中国の国家主権と領土の一体性を守るためだ」と説明した。

台湾は純粋に中国国内の問題であるとし、外国の介入を拒否する姿勢を示した。

任報道官は「最近、台湾の民主進歩党(民進党=与党)と米国が結託を強め、しばしば問題を引き起こしている」と指摘。「台湾を利用して中国をコントロール」しようとしたり、「外国人を頼りに独立」しようというのは考えが甘く、いずれ行き詰まるとし「火遊びする者はやけどする」と述べた。

中国人民日報傘下の有力国際情報紙、環球時報の胡錫進編集長は、中国版ツイッター、微博(ウェイボー)上で、軍事演習は必要となれば台湾を攻撃するための準備だとし「米国務長官や国防長官が台湾を訪問すれば、人民解放軍の戦闘機が台湾上空に飛来し行動する」と述べた。

台湾総統府の報道官は会見で、台湾海峡や周辺地域で最近見られる中国の好戦的行動は中国の国際社会におけるイメージに良くない影響を与えかねないと述べた。また、市民に対しては軍が状況を十分把握しているとして、心配しないよう呼び掛けた。

台湾国防部によると、18日に台湾海峡の中間線を越え台湾の防空識別圏に入ったのは、中国空軍のH-6爆撃機2機、J-16戦闘機8機、J-10戦闘機4機、J-11戦闘機4機の計18機。

台湾空軍機が緊急発進するとともに、ミサイル防衛システムで中国軍機の動きを監視していたという。国防部は地図で中国軍機の飛行経路を示した。

台湾の自由時報紙はこれより先、台湾空軍機が18日朝、中国空軍機に対して4時間にわたりスクランブルを17回行ったと報道。台湾東海岸沿いの花蓮の基地でF16戦闘機にミサイルが搭載される写真も掲載した。

8月にアザー米厚生長官が台湾を訪問した際も、中国軍機が一時中間線を越えて台湾の防空識別圏に入っていた。

ポンペオ米国務長官は中国の対応を非難。「告別式のために代表団を送ったところ、中国はあからさまな軍事的威嚇で応じてきた。それ以上言うことはない」と語った。

米国防総省は声明で、中国が軍隊を脅迫の道具として利用した新たな一例と指摘。同省報道官は「中国人民解放軍の挑戦的で安定性を損なう対応は、現状を変え、歴史を書き換えるための継続的な試みを反映している」と述べた。

(※原文記事など関連情報は画面右側にある「関連コンテンツ」メニューからご覧ください)

ロイター
Copyright (C) 2020 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

NY外為市場=ドル急伸し148円台後半、4月以来の

ビジネス

米金利変更急がず、関税の影響は限定的な可能性=ボス

ワールド

中印ブラジル「ロシアと取引継続なら大打撃」、NAT

ワールド

トランプ氏「ウクライナはモスクワ攻撃すべきでない」
MAGAZINE
特集:AIの6原則
特集:AIの6原則
2025年7月22日号(7/15発売)

加速度的に普及する人工知能に見えた「限界」。仕事・学習で最適化する6つのルールとは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「二度とやるな!」イタリア旅行中の米女性の「パスタの食べ方」に批判殺到、SNSで動画が大炎上
  • 2
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長だけ追い求め「失われた数百年」到来か?
  • 3
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」だった...異臭の正体にネット衝撃
  • 4
    真っ赤に染まった夜空...ロシア軍の「ドローン700機…
  • 5
    「このお菓子、子どもに本当に大丈夫?」──食品添加…
  • 6
    「史上最も高価な昼寝」ウィンブルドン屈指の熱戦中…
  • 7
    約3万人のオーディションで抜擢...ドラマ版『ハリー…
  • 8
    「オーバーツーリズムは存在しない」──星野リゾート…
  • 9
    「巨大なヘラジカ」が車と衝突し死亡、側溝に「遺さ…
  • 10
    歴史的転換?ドイツはもうイスラエルのジェノサイド…
  • 1
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 2
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 3
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首」に予想外のものが...救出劇が話題
  • 4
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 5
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...AP…
  • 6
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 7
    イギリスの鉄道、東京メトロが運営したらどうなる?
  • 8
    完璧な「節約ディズニーランド」...3歳の娘の夢を「…
  • 9
    エリザベス女王が「うまくいっていない」と心配して…
  • 10
    「二度とやるな!」イタリア旅行中の米女性の「パス…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中