ニュース速報

ワールド

タイ政府、大学当局通じて学生の王室改革要求抑え込み

2020年09月14日(月)09時03分

9月13日、タイ政府の意向を受けた各県知事が大学当局を通じて、学生に王室改革の要求を取り下げさせることを目指している。写真は5日、バンコクの教育省前で行われた反政府デモ(2020年 ロイター/Soe Zeya Tun)

[バンコク 13日 ロイター] - タイ政府の意向を受けた各県知事が大学当局を通じて、学生に王室改革の要求を取り下げさせることを目指している。サムチャイ・サワングカルン上院議員が13日、ロイターに語った。

同国では7月半ば以降、軍を後ろ盾とするプラユット首相の退陣と、新憲法制定、総選挙を求める抗議行動がほぼ連日行われている。特に学生グループは10項目の王室改革要求を掲げ、タイでタブー視されてきた王室批判にまで踏み込んだ。

こうした中でサムチャイ・サワングカルン氏はロイターに、19日にバンコクをはじめ各地で予定される反政府集会を前に、県知事が大学トップを会談のために招集したと明かした。タイの上院議員は、軍が設置した国家平和秩序評議会によって任命されている。

同氏は「大学運営側はこの問題を学生に理解させ、王室に関する要求をやめさせるべきだ。われわれは知事に反政府集会の阻止を命じていないが、特に王室に向けられた改革要求の面で、(政府の意図を)大学当局によく分からせてほしいと伝えた」と説明した。

タイ内務省のある高官は、大学宛てにそうした通達が送られたことを認めた。王室はコメント要請に応じていない。

一方、最初に王室改革を打ち出した学生指導者は政府の姿勢について、追い詰められた末の「自暴自棄の作戦」で人々を弾圧し、威嚇しようとしていると批判した。

ロイターが入手したある大学宛ての通達には「抗議行動に参加している一部グループの振る舞いは不適切ではないかと懸念される。例えば王室の転覆を図ったり、不敬罪を定める刑法112条の廃止を求める連中だ」と記されている。

ある反政府集会に参加した学生は、自身が所属する大学に対して政府が「トラブルメーカー」になりそうな人物のリストを作成するよう要請したと話した。

タマサート大学講師のAnusorn Unno氏は、政府が大学側にこのような通達を出すのは珍しいことではないと述べ、今回はたまたまその事実が分かっただけだとの見方を示した。同氏は、学生たちの表現の自由を支持する100人以上の学会関係者による共同署名に加わっている。

ロイター
Copyright (C) 2020 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:求人詐欺で戦場へ、ロシアの戦争に駆り出さ

ワールド

ロシアがキーウを大規模攻撃=ウクライナ当局

ワールド

ポーランドの2つの空港が一時閉鎖、ロシアのウクライ

ワールド

タイとカンボジアが停戦に合意=カンボジア国防省
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 6
    「衣装がしょぼすぎ...」ノーラン監督・最新作の予告…
  • 7
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 8
    【世界を変える「透視」技術】数学の天才が開発...癌…
  • 9
    中国、米艦攻撃ミサイル能力を強化 米本土と日本が…
  • 10
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指すのは、真田広之とは「別の道」【独占インタビュー】
  • 4
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 5
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 6
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 7
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 8
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 9
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 10
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中