インタビュー:M&A収益1000億円へ上積み、クロスボーダー強化=大和証G社長
大和証券グループ本社の荻野明彦社長。5月28日、東京で撮影(2025年 ロイター/Miho Uranaka)
[東京 23日 ロイター] - 大和証券グループ本社の荻野明彦社長は、2031年3月期のM&A(合併・買収)の関連収益を現在計画している700億円から1000億円へ上積みする方針を明らかにした。国境をまたぐクロスボーダーの案件への対応力を強化する。
ロイターとのインタビューで語った。
荻野氏は「クロスボーダーM&Aの起点になるのが東京だ」と説明。今年4月に海外拠点との連携を担う専門部署を東京に新設し、10月には6人体制へ拡充した。日本企業の海外投資と、円安を背景とした海外企業の対日投資の双方を取り込む。
M&Aを手がける人員は現在の約640人から2030年度までに900人体制へ拡充する計画を掲げており、欧米市場の低迷局面で良質な人材を積極的に採用してきた。利益を一時的に圧迫してきたが、荻野氏は「ここからは刈り取りに入る」とし、収益の本格回復に自信を示した。案件の獲得と執行力を高めるため、シニア級のマネージング・ディレクターもさらに増員する。
アクティビストと呼ばれる物言う株主の動きが活発化する中、資本政策や株主還元、投資家向け広報(IR)など企業の経営・財務戦略を横断的に助言する体制も構築している。10月には投資銀行部門内に資本市場戦略部を新設した。現在15人程度が在籍し、M&Aから資金調達、アクティビスト対応まで経営戦略全体に踏み込んだ助言を行う。
日本市場では企業統治(コーポレートガバナンス)改革の進展を背景に、資本効率を高めるための事業売却や非公開化、成長分野への再投資が活発化している。大和証券GのM&A関連収益は25年3月期に589億円で過去最高だった。
競合他社もM&Aの需要を取り込もうと体制や国外との連携を強める中、大和証券Gは約1000億円までの中規模案件に注力する。荻野氏は同分野で「世界ランキングで上位5位以内を目指す」と述べた。「日本企業がこれまで以上に大胆な意思決定を行う局面に入っている」と、26年もM&A助言の需要は強いとの見方を示した。
<来春も賃上げ方針>
荻野氏は、来年の春闘も定期昇給とベースアップ(ベア)合わせて平均5%の賃上げを目指す方針を明らかにした。物価高が続く中、優秀な人材を確保する。過去4年間で累計20%の賃上げを実施してきたが、会社への帰属意識も高めるため、全社員を対象に、賃上げ分の一部を持ち株会を通じた自社株付与とすることも視野に入れている。
総合職の初任給も現在の30万円から31万円に上げる方向で検討しており、いずれも労使交渉を経て決定する。
*17日にインタビューしました。
(浦中美穂 編集:久保信博)
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