ニュース速報
ビジネス

トリプルレッドで米財政への警戒度高まる=DBRS

2024年11月15日(金)09時28分

 米共和党が大統領職と上下両院を掌握する「トリプルレッド」を達成したことで、米国の財政状況に関する「警戒度を高めている」――。格付け会社モーニングスターDBRSのマネジングディレクター、ニコラ・ジェームズ氏は11月14日、ロイターにこうした認識を示した。6日、ニューヨーク証券取引所で撮影(2024年 ロイター/Andrew Kelly)

[ロンドン 14日 ロイター] - 米共和党が大統領職と上下両院を掌握する「トリプルレッド」を達成したことで、米国の財政状況に関する「警戒度を高めている」――。格付け会社モーニングスターDBRSのマネジングディレクター、ニコラ・ジェームズ氏は14日、ロイターにこうした認識を示した。

トリプルレッドよって、トランプ次期米大統領は企業や労働者、退職者向けに大規模な減税を実行できる可能性が出てきた半面、それは共和党がしばしば掲げてきた政府債務を35兆ドル以内に抑えるという目標が試練にさらされることになる。

ジェームズ氏は「米財政の重圧が増すとみなされかねない幾つかの政策は、何らかの形で抑制と均衡の力が働いて阻止されると想定していたが、今はその展開になっていない」と述べた。

実際米国債利回りも、トランプ氏の政策が既に膨らんでいる財政赤字に一段とプレッシャーを与え、インフレを醸成するとの懸念から、上昇を続けている。

ただジェームズ氏は、当面の話で言えば、米国の経済規模の大きさやドルの準備通貨としての特別な地位などの要素が米国の格付け引き下げに対するクッションになるはずだと説明した。

DBRSはより大手の格付け会社に比べて米国の信用力に対する評価が高く、格付けは最高位の「AAA」、格付け見通しは「安定的」としている。他社ではムーディーズだけが米国の格付けを「AAA」に維持しているものの、格付け見通しは「ネガティブ」だ。

トランプ氏の大統領選勝利後には、米国はウクライナ支援を継続するのか、あるいは欧州各国が、防衛費を国内総生産(GDP)比2%に引き上げるという北大西洋条約機構(NATO)の目標達成をより強く迫られるのではないかとの懸念が浮上している。

ジェームズ氏は、欧州諸国が防衛費を増額する必要が生じれば、他の支出や税制の面で「極めて難しい選択」を強いられると予想した。

特に財政状況が厳しく、なお防衛費がGDP比2%に届いていないイタリアやベルギーは、ぜい弱な立場に置かれるだろうという。

ジェームズ氏は、ドイツで財政赤字を一定規模に抑える「債務ブレーキ」が見直される可能性にも言及した。

保守野党キリスト教民主同盟(CDU)のメルツ党首は13日、見直しがあり得ると発言している。

ジェームズ氏は、欧州の安全保障情勢が緊迫化すれば、債務ブレーキ以外の長期的な手段を講じる時間がなくなり、見直しに動いてもおかしくないと分析した。

ロイター
Copyright (C) 2024 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

英利下げ支持には雇用と消費の軟化必要=グリーン中銀

ワールド

「麻薬運搬船」への複数回攻撃はヘグセス長官が承認=

ワールド

トランプ氏のMRI検査は「予防的」、心血管系良好=

ビジネス

再送-インタビュー:USスチール、28年実力利益2
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「世界一幸せな国」フィンランドの今...ノキアの携帯終了、戦争で観光業打撃、福祉費用が削減へ
  • 2
    【クイズ】1位は北海道で圧倒的...日本で2番目に「カニの漁獲量」が多い県は?
  • 3
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果のある「食べ物」はどれ?
  • 4
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 5
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 6
    中国の「かんしゃく外交」に日本は屈するな──冷静に…
  • 7
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 8
    600人超死亡、400万人超が被災...東南アジアの豪雨の…
  • 9
    メーガン妃の写真が「ダイアナ妃のコスプレ」だと批…
  • 10
    コンセントが足りない!...パナソニックが「四隅配置…
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファール勢ぞろい ウクライナ空軍は戦闘機の「見本市」状態
  • 3
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 4
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体…
  • 5
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 6
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 7
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 8
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 9
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 10
    子どもより高齢者を優遇する政府...世代間格差は5倍…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 9
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中