ニュース速報

ビジネス

アングル:東芝、主要ファンドの大半がTOB応募見通し 再建には不透明感も

2023年03月29日(水)15時40分

 東芝の再建をめぐっては、グローバルな投資ファンドによる高額の買収提案が期待されたが、紆余曲折を経て国内勢が中心となり、抑制された買収価格で落ち着いた。一方、今後、新たな成長戦略のもとで業績の悪化を反転させられるかは未知数で、事業の切り売りなど解体の可能性は消えていない。写真は東芝のロゴ。川崎市で2021年6月撮影(2023年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)

[東京 29日 ロイター] - 東芝の再建をめぐっては、グローバルな投資ファンドによる高額の買収提案が期待されたが、紆余曲折を経て国内勢が中心となり、抑制された買収価格で落ち着いた。買収が実現すれば、アクティビスト株主との長い戦いに終止符を打つことができる。一方、今後、新たな成長戦略のもとで業績の悪化を反転させられるかは未知数で、事業の切り売りなど解体の可能性は消えていない。

JIP陣営は1株4620円、総額約2兆円で株式公開買い付け(TOB)することになる。事情に詳しい複数の関係者によると、主要な海外アクティビストファンドの大半はTOBに応募する見通しという。筆頭株主のエッフィシモ・キャピタル・マネジメントなど、株価が低迷した2017年に行われた総額約6000億円の第三者割当増資に参加した一部の株主は、巨額の利益を上げるとみられる。

主要株主の多くは、入札が始まる以前にロイターに対し、最低でも1株6000円の価値があると語っていた。しかし、一部の関係者によると、アクティビストファンドの多くは長引く混乱にうんざりしており、「驚くほど低い価格」の提案でも撤退したがっているという。

ただ、他の株主は、こうした利益が見込めない可能性がある。JIPによるTOB価格は、会計スキャンダル前の14年12月から15%低く、22年6月の最高値から22%安い水準にある。

東芝が22年4月に買収を含む提案の募集を始めてからほぼ1年経過した現在、「包括的な提案」をしたのはJIPだけだったという。

GCIアセットマネジメントの池田隆政シニア・ポートフォリオ・マネージャーは、「今まで買い手との折り合いつかない状況が長く続いていたが、妥協点が見つかり、東芝再建への道筋がより明確になった」と述べている。

米プライベートエクイティのコールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)を含む一部の世界的な投資ファンドは、海外の独占禁止法に関するハードルや機密技術に対する政府の審査への懸念、資本市場の動向などを理由に早期に手を引いた。

JIPは当初、官民ファンドである産業革新投資機構(JIC)と連携していたが、島田太郎最高経営責任者(CEO)をはじめとする経営陣を続投させるというJIPの意向に対し、業界再編のための出資という理由付けが必要なJICが反発し、分裂した。

JIP連合の出資者には東芝の長年の取引先が多く含まれる。ある出資者の一社は「東芝はわれわれにとって重要な企業なので、参加を決めた」と語る。関係者によると、東芝の経営陣のほか経済産業省も尽力した。

LightStream Research のアナリスト、加藤ミオ氏は、紆余曲折を繰り返す中で決着までに長い時間を要し、東芝は「理想的なバリュエーションの機会を逃した」と指摘する。また、株主の多くは、東芝の抱える複雑性を見誤っていたと語った。

JIPは22年10月に優先交渉権を得たが、金融機関などとの交渉は長引いた。「経営陣がとどまり、現在の戦略を追求する場合、JIPが東芝をどのように改善できるのか分からない」と、ある金融機関関係者は昨年末に語っている。金融機関は、巨額の貸し付けを回収するための裏付けを必要としていた。

関係者によると、JIPは最終的に、銀行から1.2兆円のシニアローンを得るための条件として、収益が悪化した場合は業績不振の事業を売却することに同意した。今後、東芝の再建が順調に進まなければ、事業売却などの圧力が増していくことになる。

(山崎牧子 清水律子 取材協力:Scott Murdoch、Kane Wu、佐古田麻優、浜田寛子 編集:橋本浩)

ロイター
Copyright (C) 2023 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

岸田首相、「グローバルサウスと連携」 外遊の成果強

ビジネス

アングル:閑古鳥鳴く香港の商店、観光客減と本土への

ビジネス

アングル:中国減速、高級大手は内製化 岐路に立つイ

ワールド

米、原発燃料で「脱ロシア依存」 国内生産体制整備へ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが...... 今も厳しい差別、雇用許可制20年目の韓国

  • 2

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 3

    こ、この顔は...コートニー・カーダシアンの息子、元カレ「超スター歌手」に激似で「もしや父親は...」と話題に

  • 4

    翼が生えた「天使」のような形に、トゲだらけの体表.…

  • 5

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 6

    単独取材:岸田首相、本誌に語ったGDP「4位転落」日…

  • 7

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 8

    ウクライナがモスクワの空港で「放火」工作を実行す…

  • 9

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 10

    マフィアに狙われたオランダ王女が「スペイン極秘留…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 3

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 4

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 5

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 6

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 7

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 8

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 9

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 10

    メーガン妃の「限定いちごジャム」を贈られた「問題…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 10

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中