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焦点:トランプ氏のFRB「口撃」が一服、来年に対立再燃か

2019年12月17日(火)12時42分

 12月12日、米連邦準備理事会(FRB)が3回の利下げを実施し、米国株が最高値を更新したことで、トランプ大統領はFRBへの興味を失ったのだろうか。写真は12月10日、遊説先のペンシルバニア州で撮影(2019年 ロイター/Tom Brenner)

Howard Schneider

[ワシントン 12日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)が3回の利下げを実施し、米国株が最高値を更新したことで、トランプ大統領はFRBへの興味を失ったのだろうか。

金融政策に関してはトランプ氏のツイート回数は足元で激減し、FRBとの融和ムードが確立されたことがうかがわれる。一時はトランプ氏がFRB首脳部を「無知」「間抜け」などの侮辱的な言葉で罵倒し、FRBはトランプ政権の予測不能な通商政策のせいで景気が悪影響を受けるのを防ぐために利下げを通じた対応を迫られ、緊張関係が高まった。

11日に終わった連邦公開市場委員会(FOMC)では、FRBは政策金利を据え置き、トランプ氏が再選を目指している次期大統領選よりもずっと先の、少なくとも2021年まで政策変更しない公算が大きいとの方針を示唆した。[nL4N28L3KX]

ところがトランプ氏は相変わらず金利が下がり続ける必要があるとの見解は示しながらも、今のところ今週のFRBの決定には何も反応していない。実際、事実上当面の打ち止めとみられる10月の利下げ以降、トランプ氏のFRBに関するツイートはペースダウン、口調も和らいでいる。

こうした状況は、夏場から秋の初めにかけてFRBが利下げするかどうか、あるいはどのような利下げペースを採用するかを議論していた局面とは対照的だ。

トランプ氏のツイート履歴を参照する際によく使われる民間サイト「トランプツイッターアーカイブ」によると、同氏は今年8月だけでツイッターを通じFRBを25回も批判しており、FRBに対する圧力がピークに達したのがこの時期のようだ。

FRBは7月と9月、10月に利下げに踏み切り、トランプ氏はその間に少なくとも50回は金融政策についてツイートした。

一方で11月のFRBに関するツイートはたった2回、今月もこれまで3回しかない。直近は2日で、ブラジルとアルゼンチンからの鉄鋼輸入を巡る不満に絡めて「FRBは金利を下げるべきで(物価上昇率はほぼゼロだ)、金融緩和によってわれわれは他国と競争できるようになり、製造業が大きく上向く! ドルは他通貨に比べてとても高い」と投稿した。

それでもトランプ氏の言い回しは、以前よりも穏やかになっている。11月18日にはパウエル議長と「とても実りがあり友好的な会談」をしたとツイートしたが、この会談はFRBが利下げ打ち止めをほのめかした後に行われた。

波乱の夏が終わりFRBが緩和路線に転じると、株価が最高値圏に戻った上にトランプ氏が「狂気の逆イールド」と称した米国債の利回り曲線は正常化。債券市場では金融緩和で深刻な景気の落ち込みは避けられるとの確信が高まった。

元FRB高官でメロンのチーフエコノミスト、ビンセント・ラインハート氏は「トランプ氏は株安時にFRBをやり玉に挙げる傾向が強い」と語り、たとえトランプ氏の気まぐれな通商政策が今年の主な景気下振れリスクであっても、パウエル氏らFRB首脳部はその「尻ぬぐい」をせざるを得なかったと付け加えた。

ただ来年に入り、トランプ氏が再選への取り組みを進めていく中で、同氏とFRBの関係が再び試練を迎えるかもしれない。今週のFOMCの声明や最新見通しからは、政策金利のパス(経路)について強いコンセンサスが存在することが分かる。つまりFOMCメンバー17人中13人は、政策金利が来年末まで今と同じ水準で推移するとみている。

これに疑問を呈しているのはTSロンバードのチーフ米国エコノミスト、スティーブン・ブリッツ氏で、FRBの金利見通しは当たらないことが多いと指摘。来年は政策変更があるかどうかではなく、利下げか利上げかという政策の方向が問題になると主張する。

投資家は来年あと1回、恐らくは大統領選後に2回予定されているFOMCのどちらかで利下げがあると見込んでいる。

しかし例えば、歴史的低水準の失業率を背景に賃金と物価の上昇が予想外に加速し、FRBが選挙の年に利上げを検討する事態になれば、トランプ氏のツイッターを介したFRB批判が再燃するのではないか。

ブリッツ氏は「市場は利下げに賭けている」としながらも、来年の緩やかな成長と堅調な労働市場が来年終盤ごろまでに市場の金利観を引き締め方向に転じさせそうに思われると読んでいる。

ロイター
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