ニュース速報

ビジネス

アングル:中国の保険会社、シャドーバンキング投資を拡大

2018年05月19日(土)12時57分

 5月14日、中国の保険会社は高いリターンを手に入れるため、地方政府のインフラ整備計画や不動産に資金を融通しているシャドーバンキング(影の銀行)への投資を増やしている。写真は人民元紙幣。北京で2016年3月撮影(2018年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)

[北京/上海 14日 ロイター] - 中国の保険会社は高いリターンを手に入れるため、地方政府のインフラ整備計画や不動産に資金を融通しているシャドーバンキング(影の銀行)への投資を増やしている。保険会社や信託業界の関係者がロイター通信に明らかにした。

2012年の規制緩和以降、理財商品などシャドーバンキングに対する保険会社の資金配分は急激に増加。中国政府は地方政府の債務リスクや不動産バブルを抑制しようと躍起だが、当局がシャドーバンキングに規制を掛け、15兆ドルの規模に達した資産運用セクターに対して一律に規則を適用する困難さが浮き彫りになった。

アナリストによると、シャドーバンキングは仕組みが複雑で不透明なため、保険業者が最終的な借り手を突き止め、実際のエクスポージャーを把握するのは難しい。

ムーディーズの保険担当シニアクレジットオフィサー、チェン・チュ氏は「そもそも心配なのは、これらの金融商品が透明性を欠いており、保険会社は何に投資しているのか完全には把握していないことだ」と指摘する。

保険会社は全運用資産のうち最大55%までをオルタナティブ投資に振り向けることができる。この比率は2012年には9%だったが、17年には40%に高まった。

ロイターが保険会社の資産運用データを分析したところ、この40%の中で最終的に不動産やインフラ分野に融資する債務投資が最大の割合を占めていた。

保険会社をシャドーバンキングに引きつけている主な要因はその高いリターンだ。統計によると、17年末時点で中国企業の高格付け社債の平均利回りは約5%だったが、信託商品の平均リターンは9.42%だった。

ムーディーズのチュ氏は「各社は格付けの高い、非標準的な投資プロジェクトを求めて競わざるを得ない」と話す。

業界関係者などによると、中国政府は主要都市の過熱した不動産市場の沈静化や地方政府による借り入れの抑制に取り組んでいるが、保険会社のシャドーバンキングに対する投資意欲に衰えはみえない。

それどころか、これまでシャドーバンキングへの主な資金供給元だった銀行が当局の規制で資金を引き揚げざるを得なくなったことから、保険会社は融資の際の金利引き上げを求めることが可能になっているという。

国内生命保険最大手の中国人寿保険<601628.SS><2628.HK>は、2017年は信託商品や理財商品など債務商品への投資額が3018億元(474億5000万ドル)と前年から倍以上に増加。全体の投資利回りは2.43%から4.55%へと大幅に上昇した。関係筋によると、昨年の新規投資には広州市の開発区(70億元)、天津市浜海の新開発区(80億元)、国営の中国アルミニウム(100億元)などが含まれている。

ロイターの分析によると、時価総額で国内最大手の中国平安保険<2318.HK><601318.SS>は昨年、投資総額の14%に当たる3359億元を債務商品に投資した。

ロイター
Copyright (C) 2018 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米ホワイトハウス、WTOを資金削減リストから除外

ビジネス

EXCLUSIVE-BYD、25年販売目標を16%

ワールド

トランプ氏、4日にハイテク企業CEOと夕食会 改装

ビジネス

英経済は軟着陸近い、金融政策を慎重に調整へ=テイラ
MAGAZINE
特集:豪ワーホリ残酷物語
特集:豪ワーホリ残酷物語
2025年9月 9日号(9/ 2発売)

円安の日本から「出稼ぎ」に行く時代──オーストラリアで搾取される若者たちの実態は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニングをする女性、異変を感じ、背後に「見えたモノ」にSNS震撼
  • 2
    「見せびらかし...」ベッカム長男夫妻、家族とのヨットバカンスに不参加も「価格5倍」の豪華ヨットで2日後同じ寄港地に
  • 3
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体」をつくる4つの食事ポイント
  • 4
    「よく眠る人が長生き」は本当なのか?...「睡眠障害…
  • 5
    【動画あり】9月初旬に複数の小惑星が地球に接近...…
  • 6
    Z世代の幸福度は、実はとても低い...国際研究が彼ら…
  • 7
    【クイズ】世界で2番目に「農産物の輸出額」が多い「…
  • 8
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動…
  • 9
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 10
    上から下まで何も隠さず、全身「横から丸見え」...シ…
  • 1
    東北で大腸がんが多いのはなぜか――秋田県で死亡率が下がった「意外な理由」
  • 2
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動ける体」をつくる、エキセントリック運動【note限定公開記事】
  • 3
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体」をつくる4つの食事ポイント
  • 4
    25年以内に「がん」を上回る死因に...「スーパーバグ…
  • 5
    豊かさに溺れ、非生産的で野心のない国へ...「世界が…
  • 6
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 7
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
  • 8
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害…
  • 9
    首を制する者が、筋トレを制す...見た目もパフォーマ…
  • 10
    上から下まで何も隠さず、全身「横から丸見え」...シ…
  • 1
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大ベビー」の姿にSNS震撼「ほぼ幼児では?」
  • 4
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 5
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果…
  • 6
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 7
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 8
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 9
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 10
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中