コラム

日本不買運動で韓国人が改めて思い知らされること

2019年12月20日(金)12時00分

Kim Hong-Ji-REUTERS

<不買運動以前、なぜ韓国人は年間700万人も日本に殺到していたのか。その答えは韓国語で「カソンビ(価性比)」の良さにある......>

この夏以降、日本の戦略物資輸出規制に対する対抗措置として韓国内で大規模な「日本(製品)不買運動」が続いている。具体的には日本のブランド、日本製商品に対する不買運動、そして日本旅行を中止するボイコット運動などだ。しかし、この運動は非常に「感情的」なもので、その過程で笑えるハプニングも続出した。日本不買運動を取材するカメラが全部日本製だったり、不買運動のイベントで舞台に上がったバンドが日本製楽器で演奏していたり、どうみても即興的で感情的だったという印象を捨てられない。

韓国内でもこのような感情的な運動は問題解決の役に立たないという「無用論」を主張する人たちが冷静な対応を訴えたが、殆どのメディアは日本不買運動が大きな成果をあげたかのように報じた。メディアがその根拠として挙げたのは、訪日韓国人の急減だ。例えば2018年10月の1ヶ月間訪日韓国人は57万人だったが、今年の同期は19万人に急減、-65%を記録したのだ。しかし、冷静になってよく見れば韓国側の狙いが効いたとはいえない。1月から10月までの統計を見ると日本を訪問する外国人観光客の数は去年に比べ3.1%増加したからだ。

不買運動前にはなぜ日本を訪れる韓国人が多かったのか

韓国は日本不買運動がいかに日本にダメージを与えているかだけを気にしているが、忘れていることがある。輸出規制による日韓の衝突の前にはなぜ日本を訪れる韓国人が多かったかという点だ。なぜ韓国人は年間700万人も日本に殺到していたのか。その答えは韓国語で「カソンビ(価性比)」の良さにある。価性比とは「価格対比性能」の意味で、支払った金額に対して得られる性能(満足)のことである。日本語でいうなら「コストパフォーマンスが良かった」といえるかも知れない。つまり同じ金額を支払った場合、他国では得られない満足度があったのだ。

片道2時間ほどの短い距離、LCC路線の増加で割安な航空券、そして韓国内の物価上昇で近年は日本に来ても「思ったより安い」と感じる韓国人が多くなった。それに韓国では楽しめない「味」「見物」「サービス」に韓国人は魅了されたのだ。それは他の国に比べ日本を訪れる「リピーター」が多いことからも分かる。

「日本旅行より国内旅行の方が嫌いになりそう」

しかし、日本不買運動が盛り上がりを見せると日本を訪問する人たちは社会的なバッシングを受け、親日派だと批判されるようになり、訪日韓国人は激減した。そこで、彼らが代替品として選んだのはアジアや韓国内の観光地だ。しかし、少なくとも韓国内の観光は完全な代替品になれなかった。日本旅行に比べて満足度が低かったのだ。

プロフィール

崔碩栄(チェ・ソギョン)

1972年韓国ソウル生まれソウル育ち。1999年渡日。関東の国立大学で教育学修士号を取得。日本のミュージカル劇団、IT会社などで日韓の橋渡しをする業務に従事する。日韓関係について寄稿、著述活動中。著書に『韓国「反日フェイク」の病理学』(小学館新書)『韓国人が書いた 韓国が「反日国家」である本当の理由』(彩図社刊)等がある。

今、あなたにオススメ

キーワード

ニュース速報

ビジネス

米雇用4月17.7万人増、失業率横ばい4.2% 労

ワールド

カナダ首相、トランプ氏と6日に初対面 「困難だが建

ビジネス

デギンドスECB副総裁、利下げ継続に楽観的

ワールド

OPECプラス8カ国が3日会合、前倒しで開催 6月
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得る? JAXA宇宙研・藤本正樹所長にとことん聞いてみた
  • 2
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 3
    インドとパキスタンの戦力比と核使用の危険度
  • 4
    日々、「幸せを実感する」生活は、実はこんなに簡単…
  • 5
    目を「飛ばす特技」でギネス世界記録に...ウルグアイ…
  • 6
    宇宙からしか見えない日食、NASAの観測衛星が撮影に…
  • 7
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 8
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が…
  • 9
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 10
    金を爆買いする中国のアメリカ離れ
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 5
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 8
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が…
  • 9
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 10
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story