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対談

「女性初の家元」華道家・池坊専好が挑む、伝統のリブランディングとその覚悟...「池坊を筋肉質にする」とは?

2026年03月11日(水)11時10分
池坊専好 + 佐伯順子(構成:山本みずき)

池坊 いけばなは伝統を受け継ぎながら、時代ごとに新しい価値を創造しています。その時代に生きる人々の心に届かなければ、文化は続いていかないものです。その意味では、時代に応じた工夫や改革は大切です。たとえば池坊は、建築様式の変遷に応じて、新たな様式を生みだしてきました。

かつての住居には和室があり、床の間があり、そこに花を置くのが伝統的な飾り方だったわけですけれども、大正から昭和にかけて西洋風の建築様式が普及すると、床の間に置かれた立花や生花に代わり、玄関先やテーブルの上などに置く、投入(なげいれ)や盛花(もりばな)が考案されました。さらに後には表現の幅をぐっと広げた自由花(じゆうか)という花型も登場しています。

佐伯 昭和世代では、お茶やお花といえばお見合いの経歴に書く趣味の定番で、「女性が学ぶべきもの」というイメージがありましたが、現在はそうした習慣もなくなっています。

「お花=女性」という先入観を良い意味で打破して、近年は、男性による「IKENOBOYS」などの取り組みもなさっていますね。

池坊 現在いけばな人口の9割以上が女性です。しかし、大きな立花を立てるという力仕事は女性には難しい面もあるため、江戸時代前期までは実はほとんど男性に限られていたのです。

その後、江戸時代中期に松平定信が主導した「寛政の改革」で、いけばなは女性の修養の対象となり、やがて「花嫁修業」として広まっていったという歴史があります。残念ながら今は女性がするものというイメージが強いのですが......。

佐伯 お茶にも同じようなことが言えますね。男性のお稽古人口を増やしていくことは、これからの伝統文化全体に通じる、1つの大きな可能性ですね。先日、千玄室先生からも、「最近は男性の参加が増えている」とうかがいました。

昭和的な仕事一筋ではなく、趣味を楽しむ心のゆとりがある男性が増えると社会全体も豊かになるのではと思います。お花の世界では実際にどのような特徴が見られますか。

池坊 全体としてはまだ女性の方が圧倒的に多いのですが、少しずつ男性が増えてきているのも事実です。

昔は花嫁修業として学ぶ女性が中心でしたが、今はリタイア後に始められる方や、忙しいビジネスパーソンが「無になる時間を持ちたい」と習い始めるケースも見られます。そしてそのネットワークの中でさらに縁が広がっているような光景も目にします。

こうした新しい動きやニーズはとても大切にしたいですね。私自身、長らく女性の次期家元として歩んできましたが、女性が多い世界だからこそ、男性にももっと花の魅力を知ってほしいと思っています。これからもそうした流れを積極的に受け止め、できる限りサポートしていきたいと考えています。

作風は「自然とにじみ出るもの」

佐伯 先ほどは組織を率いる経営的手腕について、大変示唆に富むお話をうかがいましたが、しめくくりにやはり、華道家としての芸術世界についておうかがいしたいと思います。

専好先生のお作品には、個人の感想で恐縮ですが、美しいというだけではなく、凛とした、一本筋の通った清らかさ、すがすがしさがあり、専好先生ならではの個性を感じます。そうしたお作風はどのように培われてきたのでしょうか。

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