アステイオン

日本

舞台をまわす、舞台がまわる──山崎正和オーラルヒストリー

2017年05月24日(水)
阿川尚之(同志社大学特別客員教授)

けれども時が経つにつれ、山崎さんは自らのオーラルヒストリーもまた一つの舞台だった、改めて世の中に出せると考えたのかもしれない。そのために必要な加筆や修正を行って、出版社に原稿を渡した。そのせいか、この本は時に質問者を飛び越え、山崎正和の作品として読者に強い調子で直接語りかける。舞台を設け役者を配することにおいて山崎さんに負けず劣らず巧みな御厨さんが、こうなるのを予想してこのオーラルヒストリーを始めたのだとしたら、それもまた大したものだ。

役者は上手から下手から現れ、必死に演じ続けるが、上演時間は限られている。一体だれが舞台を回しているのか、舞台はどのように回っているのか。舞台は回せるものなのか。山崎さんだけでなく我々一人一人に、言葉のより根源的な意味で題名が問いかけるこの本は、やはり実におもしろい。

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SUNTORY FOUNDATION

阿川尚之(あがわ なおゆき)
同志社大学特別客員教授


 舞台をまわす、舞台がまわる――山崎正和オーラルヒストリー

 編者 御厨貴、阿川尚之、苅部直、牧原出
 発行 中央公論新社
 発行日 2017年3月25日

 目次
 第1回 満洲時代の記憶
 第2回 鴨沂高校、京都大学文学部時代
 第3回 劇作家としての出発、アメリカ留学
 第4回 大学紛争の渦中で
 第5回 劇作・評論活動の展開
 第6回 関西圏に根を下ろす
 第7回 サントリー文化財団設立の頃
 第8回 1980年前後の文芸ジャーナリズム
 第9回 『アステイオン』創刊
 第10回 セリフの演劇の復権と阪神・淡路大震災
 第11回 地方私立大学の現場で
 第12回 知識人の政治参加をめぐって


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