実は、中国以外にも多くの国がガリウムの生産能力を持っているのだが、中国から安く輸入できるためあまり生産していないのだ。米地質調査所の推計によれば、2022年時点のガリウム生産能力は韓国が16トン、日本が10トン、ロシアが10トン、ウクライナが15トン、さらにドイツ、ハンガリー、カザフスタンが合わせて73トンであった(U.S. Geological Survey, 2023)。
2021年の日本のガリウム生産量は3トンで、中国からの輸入量は19.5トンだったと推計される(注3)ので、もし国内の生産能力(10トン)をフルに稼働させれば、仮に中国からの輸入が3割以上減らされても国内の供給量を減らさずに済む。
もともとガリウムはボーキサイトからアルミを精錬する際の副産物として、また亜鉛を作った際の残滓として生成する。中国が世界のガリウム生産のほとんどを占めているのは、何も中国国内の資源が豊富だからというのではなく、中国が世界一のアルミ生産国であることに由来する。従ってアルミの他の主要生産国(インド、ロシア、カナダなど)も条件が整えばガリウム生産国になる可能性がある。
他の国でも生産できる
このように、もし中国がガリウムの輸出規制を強めて輸出量を減らすようであれば、他の国でのガリウム生産が活発化し、中国は独占的供給国としての地位を失うであろう。そうなれば中国の潜在的敵対国による軍備増強を食い止めるという輸出規制の本来の目的も掘り崩され、単に中国が自分で自分の首を絞めているのみ、ということになる。
つまり、理性的に考えるならば、中国当局が輸出量の減少を招くような厳しい制限を行えば、まず自国が損をすることがわかる。また、これまでガリウムを中国から輸入してきた他国もより高コストのガリウムを利用せざるを得なくなって損をする。つまり誰にとってもいいことはないし、それによって中国にとっての軍事的脅威が取り除かれるかというと甚だ疑問である。
おそらく中国はガリウムとゲルマニウムの輸出が自国の安全保障を脅かすと本気に心配しているのではないだろう。今回の規制導入の真の狙いは、一つにはアメリカの包囲攻撃に対して無策であることに対する国内の不満に対して何かやっているポーズを見せること、もう一つはガリウムとゲルマニウムに対する輸出規制の緩和を交換条件として、アメリカなどによる先端半導体製造設備の輸出規制を緩めさせることであろう。