YAジャンルでのこれらの動きを説明するのが、BEAの政治トークのパネルに参加したマイケル・エリック・ダイソンの言葉だった。ダイソンはジョージタウン大学の社会学の教授で、黒人向けの月刊誌『エボニー』の「最も影響力があるアフリカ系アメリカ人100人」のひとりにも選ばれた論客だ。そのダイソンが、パネルディスカッションのときに「トランプ大統領は down payment(支払いの頭金)なのだ」と発言した。
オバマ大統領のもとでは、人々は政府に抵抗しようとは思わなかった。若者の間にも大統領がなんとかしてくれるだろうという他力本願的なところがあり、社会的な問題に対して自ら行動しようとしなかった。だが、トランプが大統領になったことで、アメリカでは移民、黒人、女性、LGBTQ+への差別が表層化し、政治的な締め付けが強まっている。
この危機感が、性暴力の被害者による#MeToo運動や、銃乱射事件のサバイバーである高校生による銃規制運動にもつながっている。つまり、「トランプ大統領の登場は、アメリカが変わるために国民が支払わねばならなかった犠牲」というポジティブな考え方なのだ。
そこで、いくつかの出版社のブースで「新刊のセレクトに大統領選挙は関係しているのか?」と質問したところ、「大統領選へのリアクションはある」、「これは出版業界にとっての機会だ」という答えが戻ってきた。
大人向けだけでなく、児童書やYAジャンルで未来を作る若者を啓蒙する努力が見られるところにアメリカの再生能力の強さを感じたBEAだった。