だが、ファンタジーや、ティーンのロマンスをテーマにした本だけがYAではない。特に今年のBEAでは、社会正義をテーマにしたノンフィクションの新刊が目立った。
まずは、少女たちに自発的な行動を促すフェミニスト的なノンフィクションである。
『高慢と偏見とゾンビ』、『ミス・ペレグレンと奇妙なこどもたち』などの大ヒット作で知られるインディ出版の Quirk ブックスは、ケイリン・リッチ著の『Girls Resist!(少女たちよ、抵抗せよ!)』というタイトルを一押し作品としてPRしていた。これはティーンの少女たちを対象に、政治的なプロテストの方法を教えるガイドブックだ。これまでの政治運動は、ほとんどが若い男性がスタートしたものであり、女性はそれに加わるという消極的な役割でしかなかった。この本の目的は、少女たちに自分のパワーを信じさせ、自ら行動を取らせることだ。
今年2月には、ハーパーコリンズから『A Girl's Guide to Joining the Resistance: A Feminist Handbook on Fighting for Good』という、同じように少女を対象にした政治運動の啓発本が出ている。
歴史的に有名な女性たちからインスピレーションを得るというのも今年のトレンドのひとつだ。『The A-Z of Wonder Women』、『Rad Girls Can: Stories of Bold, Brave, and Brilliant Young Women』、『History vs. Women』などのノンフィクションは、いずれも伝統的な女性のイメージや役割を超えて世界を変える行動を取った女性たちを紹介している。
移民の視点を伝える本もこれまでより多かった。
BEAで出版社がPRに力を入れていた『Darius The Great Is Not Okay』(Dial)は、イランからの移民の少年ダリアス(Darius)の心境を描くYA小説だ。学校ではイスラム教徒としてよそ者扱いされ、故郷のイランでは「アメリカ人」とみなされる。
『My Family Divided』は、女優ダイアン・ゲレロの2016年刊行の自伝を中学生から高校生向けに書き直したものだ。ゲレロが14歳のときにコロンビア出身の家族全員が移民税関捜査局(ICE)に逮捕されて強制送還され、アメリカで生まれたために国籍を持っているゲレロだけが1人取り残された。有名な女優の体験談だからこそ、家族が引き離される悲劇が若者の心に伝わりやすい。
もうひとつのトレンドは「グラフィック・ノベル」だ。定義は曖昧なのだが、スーパーヒーローを中心とした「アメリカンコミックス」や日本の漫画とは異なるカテゴリとみなされている。今年YAジャンルで際立ったのは、社会正義のメッセージと「グラフィック・ノベル」との融合だ。中高生に複雑なメッセージを伝えるためには、ビジュアルなグラフィック・ノベルはパワフルなツールになるからだ。

共著者のコルファーは、本にサインをするとき、自分の名前に加えて「人は誰も『違法』ではない(No One Is Illegal)」と書く。共著者たちが読者に伝えたいメッセージはそこなのだろう。