これらの違いを見ると、ハミルトン時代のフェデラリストは現在の共和党で、リパブリカンは現在の民主党だという印象を受けるかもしれない。だが、北部のフェデラリストが奴隷制度に早くから反対していたのに対し、リパブリカンの政治家のほとんどが奴隷を所持する農業主だった。これらの党の中間にいた初代大統領ワシントンは「奴隷反対」の立場だったが、自分自身も奴隷所有者だった。遺言で所持していた奴隷を解放し、自由になった彼らと子どもたちのために金も残したが、それはワシントンと妻が奴隷を使うことの恩恵を十分に受けた後、つまり死後のことだった。
この本を読んでいると、大統領を決めるときの政治的な駆け引きや根回しが現代とよく似ていることに驚く。実は、アダムズが大統領再選を狙っていたとき、それを阻止したのは、同じ党に属するハミルトンだった。大統領としてのアダムズの仕事を批判する手紙を自分の支持者に書き、それが公にひろまって、対立するリパブリカンのジェファーソン大統領の誕生につながった。
【参考記事】トランプ勝利で深まる、共和党「崩壊の危機」
ジェファーソンが大統領になるのが明らかになってきたフェデラリストのコーカス(党員集会)では、「ジェファーソンが大統領になるくらいなら、内戦のほうがいい」という絶望的な声も出たらしい。ドナルド・トランプが予備選に勝つ見込みが強くなった現在の共和党では、「トランプを指名候補にするくらいなら、第三党の候補を出してそちらを推す」という意見すらあるが、建国時代にも同じような状況があったのだ。
また、現在の共和党内では、「トランプが共和党を崩壊させる」という恐れを口にする政治家が出てきているが、実際に、ハミルトンのせいで「フェデラリスト」は威力を失い、ジェファーソン以降はリパブリカンの大統領が続いた。
このような共通点だけでなく、政治的理念の違いが個人的な深い怨恨に発展していくところも、今のアメリカの政治や大統領選に驚くほど似ている。つまり、人間の性(さが)は、そう変わらないということなのだろう。