今年は、大統領選でアメリカの次期大統領を決める重要な年だ。元国務長官のヒラリー・クリントンは有力候補のひとりだが、これが実現するまでには2つの大きなフェミニズムのムーブメントがあった。

 第1世代(1st. wave)のフェミニズムは、19世紀末から20世紀はじめにかけての「女性の参政権運動(Women's suffrage)」だ。投獄を覚悟で戦った女性たちのおかげで、女性の私たちは現在のように選挙権を得ることができたのだ。

 第2世代(2nd. Wave)のフェミニズムは、中絶の合法化や、社会的な男女平等を憲法のレベルで求める運動で、黒人の公民権運動と反戦運動が高まった1960年代におこった。この運動後の知的階級のアメリカ人女性は、フランスの女性哲学者シモーヌ・ド・ボーヴォワールの「女は女に生まれるのではない。女になるのだ」という言葉のとおり「女も努力さえすれば、男と同じことができるはず」と信じて育った。

 私の周囲には、第2世代のフェミニズムで育ったアメリカ人女性が多い。ヒラリー・クリントンなどの女性が要職につくようになったのは、この世代の女性が努力したからだ。しかし、私の女友達が自分の人生を通じて知った現実はもっと厳しかった。男女同権が進んでいると思われているアメリカでも女性が男性と同様に働くのは困難だ。同じ仕事をしていても、男性と女性では賃金に格差があり、組織で要職に就く女性はいまだに多くはない。

 しかも、男性と同様かそれ以上に努力して要職に就いた女性(とくに母親)は、家庭で主婦や母としての役割をきちんと果たしていないことに後ろめたさを感じている。また、自分の能力を過小評価して遠慮してしまいがちだ。

 そういった女性に対して、後に続く女性を助けるためにも「Lean In(遠慮して身を引いたり、傍観したりすることの逆で、身を乗り出し、積極的に関わって行くこと)しろ」と呼びかけたのが、フェイスブックCOO(最高執行責任者)」のシェリル・サンドバーグの『LEAN IN』という本だった。

 日本でも翻訳出版された良書だが、「ここに書かれている内容では、まだ足りない」と思った女性がいた。