こうした写真哲学は、パリとそれに絡みつく日常の美学から来ているのかもしれない。実際、自らのスタイルであるストリートフォトグラフィーについて、彼はこう語る。
ストリートフォトグラフィーは生活を切り取るものだ。日常の、その瞬間の、私たちの周りにある全てのね。それはどんな小さなことも、あるいは意義がないと思われることまでをも含む。私はそうしたものを、先入観を入れずに本能的に切り取りたい。歴史のあるパリには、あらゆる魅惑的な日常が満ち溢れている。
結果として、パリがはらむ「フレンチタッチ」に大きな影響を受けているのかもしれない、とも言う。アンリ・カルティエ=ブレッソンに代表される、20世紀前半~中期のクラシックな感覚と決定的瞬間の2要素が融合された写真表現だ。
無論、さまざまな歴史と芸術を内包するパリがどんな非日常さえ日常化してしまうという点には、欠点もある。クリシェ(目新しさのない常套手段)である。誰かが、それも多くの者がすでに行ったものと同じになってしまう危険性から逃れるのは極めて難しい、とアルノーは語る。
とはいえ、だからこそ、ごく平凡な日常の中でも、人間のほっとする部分を瞬間的に鋭く見極める「写真家の目」が養われたのかもしれない。ちなみに、彼の作品には、政治的・社会的なメッセージを持つ写真はほとんど見られない。それは、意図的にせよ無意識的にせよ、AFPでの仕事と切り離しているためらしい。
今回紹介したInstagramフォトグラファー:
Stéphane Arnaud @frommywindows
米・イラン戦争で変わる地域紛争の「大前提」/石油危機を恐れるべき理由