またシミュレーション環境の中では、時間が現実の通りに流れる必要はない。時間を早送りしておけば、ロボットはそれだけ速く学習できることになるわけだ。

AIが学習するには膨大なデータが必要だ。そのデータを効率よく集める方法として、このようなシミュレーション環境を使うという手法はこれまでにも使われてきた。

韓国の碁のチャンピオンに勝ったGoogle傘下DeepMindのAI「AlphaGo」は、シミュレーション環境の中で何度も何度も自分相手に戦ってきた。自動走行車ベンチャーのZooxも、シミュレーション環境の中で走行距離を伸ばし、より安全な自動走行AIを作ろうとしている。

ただこうしたシミュレーション環境を作るには、それなりの技術とコストがかかる。それをNVIDIAがすべてのロボットベンチャーに代わって開発し、広く提供しようというわけだ。

NVIDIAには、科学演算で培ったノウハウがある。物理法則をバーチャルリアリティの中に実装するのは得意だ。光の当たり方などをリアルに再現する技術にも定評がある。NVIDIAがこれまでゲームや科学演算、AIなどの分野で培ってきた技術が、すべて役に立つことになる。NVIDIAならではのシミュレーション環境となることだろう。

このシミュレーション環境で学習したAIを搭載するだけで、ロボットはその日からリアルな環境を理解し、活動できることになる。

NVIDIAはまた、ロボットのハードウェアの規格もいくつか用意し、提供し始めた。ハードウェアとソフトウェア(AI)の両面から、ロボットベンチャーを支援しようというわけだ。

今後、シミュレーション環境「Isaac」を利用して賢くなったロボットが次々と登場してくることだろう。製造業からヘルスケアまで、2、3年後にはあらゆる産業でロボットが活躍する社会になっているかもしれない。

このほかにも、バーチャルリアリティの中に複数のデザイナーが入って、議論しながら製品をデザインできる開発環境なども発表された。

このように発表されたのは、他社が利用することでAI革命が加速しそうなインフラ的な技術ばかり。こうしたインフラを使ってAI革命は加速こそすれ、ブームが2,3年以内に収束することなどありえない話だと思う。

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