2番目は、関税の具体的なターゲットです。本当にアメリカを自給自足経済にするために、経済鎖国をして全世界を敵に回すのが目的かというと、交渉が成立した国には思い切り税率を軽減しているので、そうではなさそうです。

一部には本丸は中国で、それ以外の国との税率提案や交渉は中国を追い込むためという説も流れています。またイーロン・マスク氏はEUとは相互非課税とする提案をしています。このように、ターゲットがどこなのかが不明確なことも、疑心暗鬼を拡大することになっています。

もちろん、アメリカの大多数の世論も、市場関係者も、この2つの謎については、政権の側が明確な答えを「持っていない」ことに薄々気付いています。支持層の持っている「怨念」を政治的なエネルギーにしつつ、支持層の期待に応えるようなドラマを演出するのが目的だということも多分理解していると思います。

不況を引き起こそうとは思っていない

更に言えば、政権は株価の大暴落や深刻な不況を起こそうとも思っていない、これも恐らく政財界の大勢としては理解していると思います。大不況となれば与党・共和党は26年の中間選挙で大敗し、場合によっては大統領の罷免につながるからです。

そうなのですが、現在行われていることは「リアルな大統領権限の発動」であり、このままでは「本当に実体経済への大きな影響」が避けられません。その結果として最悪の事態としては、誰もコントロールのできない破綻にいたる可能性は否定できないのです。

その一方で、大統領の支持層が持っている「現状への不満」や「怨念」というものも「リアル」であるという理解は静かに広がっています。ですから経済成長だけが正義という議論については、今のところは「やりにくい」空気があります。このことが問題を一層複雑にしているとも言えます。

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