興味深いことに、建物そのものよりも「建物と建物の間の空間」のほうにより焦点が当てられていた(僕は龍安寺の枯山水を思い起こした)。要は、単なる264のアパート部屋というより、生き生きとして安心できる「共有住宅」の感覚を持てる地区を作り上げるということだ。
取材の最後に、大杉はハッとする一言を放った。自分の仕事は本当に興味深いものだと思う、と。当たり障りのない言葉かもしれないが、多くの場合、人は取材の最後の最後になって記者に伝えたい1つのことを言うもの。大杉の場合、建築家としての長年の挑戦とこのレベルに達するまでの困難な道のりを語ってきた後に彼女が言いたかったのは、つまり彼女が今も変わらず建築の仕事を愛しているということ。僕はこれに、ちょっとした刺激を受けた。
大杉薫里
Kaori Ohsugi
●建築家
米・イラン戦争で変わる地域紛争の「大前提」/石油危機を恐れるべき理由