ヘンリーの引退表明とそのやり方に衝撃が広がる一方で、同情や惜しむ声も出てきている。英王室は、欧州諸国の王室と比べても概して多忙で自由がない。「金魚鉢」に暮らし、マスコミやエンタメ界から格好の餌食にされる。日本で『ザ・クラウン』(エリザベス女王を主人公にその波乱やロマンスを描くドラマ)みたいな番組が作られるとは思えないし、コメディアンが皇室を際どいネタにするなど考えられない。

今回の危機がどう展開するのかはまだ分からないが、ヘンリーとメーガンが彼らの決断を正当化できるだけの新たなアイデンティティーを獲得できる可能性だってあり得る。彼らは「汚い」商業主義や「現役」王室からの資金援助に頼ることなく、積極的な役割を果たす道を探らねばならない。

英王室にはこの手の前例があり、1936年にはエドワード8世が王位を捨て、内気で吃音(きつおん)の弟ジョージ6世が跡を継ぐという危機が起こった。もっと近いところでは、チャールズ皇太子とダイアナ妃の離婚劇も悲惨だった。でも英王室はどちらも乗り越えた。実際、時がたって人々は、これらの事件をやむを得ないもの、あるいは最善だったとさえ考えるようになっている。耐久力は英王室の大きな特徴の1つだ。今こそその強靭さを発揮するときだろう。

<本誌2020年1月21日号掲載>

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