<2022年のロシアによるウクライナ侵攻後、ラトビアではそれまで意識されてこなかった東部国境付近に柵や防衛用障害物が設置され、抽象的だった国境という線が具体的な壁となり顕在化した。安全保障上の大きな変化は、動物の生態系や人々の日常生活、家族史を分断している>

ソ連の崩壊でラトビアは1991年に独立を回復したが、その後も国境地帯で暮らす人々は日常生活で国境を意識する必要はあまりなかった。しかし2022年にロシアがウクライナに侵攻し戦闘が激化すると、ロシアと接するラトビアの東部国境はにわかに注目を集め始めた。

歴史的に西欧と東欧に挟まれ、現在はNATOの最前線に位置するラトビアは、しばしば対立する2つの世界を隔てる国境と見なされる。欧州の多くの地域では、国境はほとんど意識されず、自然の風景が緩やかに変化するだけでしかない。しかしウクライナ戦争以降の3年の間に、ラトビアの国境はフェンスや監視塔、パトロールによって顕在化され、抽象的な概念の国境が現実の境界線になってしまった。

ラトビア出身の写真家レイニス・ホフマニスは、国家が人々の生活を翻弄するこの時代に、国境地帯に住むとはどういうことか、という問いから「分かち合う地平線」のプロジェクトを開始した。国境は自然の生態系と人々の生活の双方を分断し、自然にも人間の営みにも変化を迫っている。

ラトビア地図

【ラトビア】



次ページ:【写真特集】ウクライナ侵攻で顕在化した国境 分断される自然と日常〜ラトビア2





Photographs by Reinis Hofmanis

撮影:レイニス・ホフマニス instagram

1985年生まれのアーティスト、写真家。ドイツとラトビアの大学で写真と視覚伝達を学ぶ。社会人類学的視点から社会的集団とその行動、周囲の環境への影響をテーマに作品を制作。富士フイルム「GFX Challenge Grant Program 2024」大賞を受賞

【連載第1013回】Newsweek日本版 写真で世界を伝える「Picture Power」2026年1月13日号掲載

「AIに使われるか、AIを従えるか」 一橋大学が問う、エージェント時代の「次世代エグゼクティブ」の条件
「AIに使われるか、AIを従えるか」 一橋大学が問う、エージェント時代の「次世代エグゼクティブ」の条件
【写真特集】顕在化したロシア国境が分断する自然と日常〜ラトビア