<インドネシアのジャカルタ首都圏は人口3000万人強。交通渋滞や大気汚染、地盤沈下が著しく、遷都計画が進んでいる。すでに移住した公務員は1000人ほどと言われるが、どこも閑散としていて役者がいない舞台装置のよう。環境にやさしいとの触れ込みも「グリーンウォッシュ」との批判は多く、もくろみ通りに発展するのか、壮大な無駄遣いに帰すのか>

ジャングルを切り開いて造られているその新しい都市には、荘厳な大統領宮殿や官公庁、高層住宅が立ち並び、広場や公園も整備されている。しかし、行き交う人はほとんどいない。街全体が役者のいない巨大な舞台装置のようだ。

インドネシアのカリマンタン島東部にあるヌサンタラは、人口集中と水没の危機にあるジャカルタからの首都移転先として建設が進行中だ。中心部はほぼ完成し、2045年までに190万人が居住する、環境に配慮した「スマートフォレストシティー」の実現を目指す。しかし、その壮大な構想に暗雲が漂っている。

同国の環境NGOのJATAMは、この計画は太古の森林を脅かす「グリーンウォッシング」だと断じる。先住民バリク族は、政府による「土地の強奪」を訴えている。さらに、24年10月のプラボウォ大統領の就任以降、政府の投資は縮小傾向にあり、首都移転計画の見直しの可能性を指摘する声もある。

ヌサンタラはインドネシアの未来を担う先進都市となるのか、それとも「ホワイトエレファント」(無用の長物)としてジャングルに放置されることになるのだろうか。

ヌサンタラマップ.jpg
【インドネシア】

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Photographs by Nick Hannes-Panos

撮影:ニック・ハネス 

1974年、ベルギーのアントワープ生まれ。1997年にゲント王立芸術アカデミー(KASK)を卒業。フォトジャーナリストとして8年間活動した後、報道から離れマスツーリズム(大衆化した観光)、都市化、移民、紛争などをテーマとした作品を制作し、母校KASKでドキュメンタリー写真も教えている

【連載第1009回】Newsweek日本版 写真で世界を伝える「Picture Power」2025年11月25日号掲載

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