確かに、これまでに議会が関税に関する権限の一部を行政府に委ねた例はある。しかし、そのようなケースでは、大統領の権限に法律で「厳しい制約」を課すのが常だ。

ところがIEEPAには、大統領が貿易を「規制」する権限について「手続き上の制限」を定めた条項がない。

もし、IEEPAが関税に関する権限を大統領に付与しているとすれば、大統領に途方もなく大きな権限を与えていることになる。しかも、大統領がその権限を行使するためには、「緊急事態」だと宣言するだけでいい。

こうした点を考えると、IEEPAが関税に関する権限を大統領に与えているとは解釈できないと、最高裁の多数意見は結論づけた。

もう一点見過ごせないのは、政府の規制権限に課税の権限を含めている法律が1つもないということだ。アメリカの法律の中に、「課税」という意味で「規制」という言葉を使っている法律は存在しないのだ。

トランプが大統領に返り咲いてから13カ月の間、最高裁は仮処分の類いを通じて政権の権限乱用に道を開き続けてきた。その最高裁が今回、毅然とした態度で政権の看板政策を否定したのは、驚くべきことなのだろうか。

最高裁の「譲れない一線」