<ウクライナに堕ちたロシアのドローンの残骸に新型高速ドローンの痕跡が見つかった。イランは技術支援だけでなくドローンの現地生産まで支援している>

ロシアの地上部隊が消耗戦で膠着する中、ロシア政府はイラン製ドローンによる空からの優位性を強化しようとしている。

2026年1月初旬、ウクライナで発見されたドローンの残骸には、ロシアが配備を進める新型高速ドローンの痕跡があった。

ウクライナ大統領ヴォロディミル・ゼレンスキーは1月22日にダボスで開催された世界経済フォーラムでこう懸念を表明した。「我々は1日約1000機のドローンを生産している。本当に生産しているが、それでも足りない。まったく足りない」

ウクライナの情報機関によれば、ロシアも近く1日1000機のドローンを生産する体制に入る見込みで、その多くはイランによる技術支援によるものとされる。

イランの支援でドローン戦力を急拡大させたロシアが、ウクライナの防空網を疲弊させつつインフラを継続攻撃。膠着状態の戦況を有利に進める足がかりとなりつつある。

ウクライナが最も懸念するのは、ロシアが長距離攻撃用ドローンの生産を強化し、ウクライナ国内の標的に大規模な攻撃を仕掛けている点だ。

イランがロシアに長距離・自爆型ドローンを多数供給しているのは以前から知られていた。あまり知られていないのは、イランがロシアに対し、自国でドローンを製造するノウハウまで教えているという事実だ。

CIAで兵器技術と拡散防止を担当したある幹部の見解でも、イランからの技術導入でロシアは高度なドローン群を開発できるようになり、ウクライナの防空網を弱体化させ、国としての持久力を奪っている。

その結果、ロシアは高価な精密ミサイルを温存し、より重要な標的への攻撃に集中できるようになっているという。

量産体制に入るロシアとウクライナ

2022年2月のロシアによる全面侵攻以降、ウクライナとロシアはともにドローン生産を加速させている。

当初、ロシアは自爆型ドローンを大量に製造する能力を持たず、長距離攻撃ドローンの決定的な役割についても十分に理解していなかった。代わりにミサイルなどの従来型兵器に注力し、ドローンには主に情報収集や偵察、監視に使われていた。

一方で、必要なノウハウを持つイランは、以前からロシアとの防衛協力関係にあり、長年の経済制裁下で外貨収入を必要としていた。

2022年初め頃から、イランはロシアにウクライナ戦争に向けたドローンと関連技術を提供している。同年末までには、イランが設計した攻撃型ドローンをロシア国内で製造するための合意も成立した。

ロシア西部タタールスタンにある工場では現在、イランが設計した安価で量産向きの自爆型ドローン「シャヘド136」を基にした「ゲラン2」が大量に生産されている。

デルタ翼型の特徴的な形状を持つこの機体は、航続距離、滞空時間、爆薬の搭載量を最適化しており、約40〜50キロの爆薬を数百キロ先に運搬できる。

このデルタ翼設計は、急降下による精密攻撃を可能にし、低速時の失速を防ぎ、攻撃段階での安定性を高めている。そのため、長距離ミサイルに比べ、はるかに低コストで戦略インフラを攻撃できる。

ロシアは現在、1日あたり数百機のゲラン2を生産しており、今後は数千機規模の一斉発射も可能になるとみられている。

ロシアはさらにこのドローンを改良し、高精度の航法装置、より強力な弾頭、新型エンジンなどを搭載しているという。

一部報道によれば、ロシアは遠隔操作による飛行を可能にするため飛行中のドローンから各種データや映像をリアルタイムで地上に送信する技術の導入を試験中で、事前に設定された航路を飛ぶ従来型に比べて命中精度と航続距離の向上が見込まれる。

またイランは、ジェットエンジンを搭載したシャヘド238を基にした高速ドローンの技術も提供している。

「ゲラン3」と呼ばれるこのドローンによって、ウクライナの防空網による探知・迎撃を困難にしている。さらに新型のゲラン4やゲラン5も開発され、すでに実戦投入されているとみられる。

経済制裁をかいくぐる調達網

イランの支援と設計図があっても、ロシアはなお多くの部品を西側や中国のサプライヤーに依存しており、エンジン、燃料ポンプ、GPS・航法装置、半導体、アンテナ部品などは市販品が使われている。

イランはこうした西側部品を調達するため、仲介業者や企業ネットワークを駆使し、制裁網を回避してロシアに協力している。

イランの企業「サハラ・サンダー」が主導する調達網は、アラブ首長国連邦(UAE)やインドの運送会社を活用し、イラン製ドローンや部品をロシアに販売。生産工場設立の契約交渉にも関与した。

米財務省はこの企業と関連企業に制裁を科したが、イラン側は新たな企業を設立し、ロシアが必要とする部品を引き続き提供している。撃墜されたゲラン2に含まれていた外国製部品に関する複数の調査報告は、ロシアが今なおこれらを入手している実態を明らかにしており、イランの支援はほぼ確実とされている。

テロ兵器としてのドローン

ロシアはゲランを含む長距離型ドローンを使い、ウクライナの民間人や民間インフラ、住宅地などを意図的に攻撃している。国連の報告によれば、救助隊や人道支援拠点も標的にされているという。

国連は2025年10月、ロシアによる南ウクライナでの無人機攻撃について、「人道に対する罪」および「戦争犯罪」に該当するとの見解を示した。

2025年5月に行われた北東部ハルキウと南部オデーサへの2日間の攻撃は、こうしたドローン攻撃の破壊力と人道的被害の深刻さを示している。

『キエフ・ポスト』によれば、ロシアは100機以上のドローンを発射。ハルキウでは3ブロックが焼失し、90軒の商店が被害を受け、2人が負傷。オデーサでは1人が死亡し、住宅が損壊した。

ウクライナは、ロシアがイラン設計のドローンで成果を上げていることを受け、ドローンの多様化、ロシアの製造インフラへの攻撃、対ドローン技術の開発などで対応している。

利害が一致する両国

協力する側のイランも大きな恩恵を受けている。制裁による経済的苦境にあえぐ中、ドローンと生産施設に関する契約により、10億〜17億5000万ドルの収入を得ると見られている。報道によれば、ロシアは一部を金で支払っている。

イランは自国経済の事情から、今後もしばらくロシアへの支援を止める可能性は低い。ゲラン2の改良や新型開発に関与することは、イラン自身が新型ドローンを製造・運用する上でも軍事的な利点がある。

だが、この関係でもっとも得をしているのはロシアだ。イランの支援がなければ、ロシアは戦場での選択肢がさらに限られていたはずだ。低コストのドローンは、ロシアが高価な精密ミサイルを温存し、ドローンの大群でウクライナの重要インフラを攻撃する戦略を可能にしている。

そして地上戦で大きな進展が見込めない中、戦争が5年目に突入しようとする今、この戦略はより重要になっている。

The Conversation

Amy McAuliffe, Visiting Distinguished Professor of the Practice, University of Notre Dame

This article is republished from The Conversation under a Creative Commons license. Read the original article.

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