排外主義の台頭で、多くの人が事実を直視できていない
しかし、その一方で排外主義が高まっているのだとしたら、なんともバランスが悪い。
国際労働市場をとりまく環境において、排外主義がもたらす負の影響は非常に大きい。まず、受け入れ国、送り出し国双方において移民はより一層、必要とされているにもかかわらず、排外主義の台頭によりこうした状況を正面から扱えないという問題がある。事実、すでに新旧問わず多数の移民が受け入れ国において国民や市民として経済社会の担い手となっているにもかかわらず、多くの人がそれを直視することができていない。(201ページより)
排外主義は、「すでにここにある移民の暮らし」を破壊する。第二次トランプ政権の成立によって起きた国家による大量の移民の強制送還がその典型的な例だ。
しかも移民の強制送還や移住ルートの閉鎖などは、受け入れ国の経済活動を減速させることになる。そしてそれは、近い将来の日本にも当てはまる。排外的な思考は経済的に悪影響を及ぼすだけでなく、冒頭で触れたような差別意識にもつながっていくからだ。
だからこそ、外国人受け入れに「不安」を持つ方は、今こそ事実を再認識してほしい。そんな思いを軸に、著者の以下の主張でこの記事を締めくくりたい。
人権を基調とした欧米の移民政策の歴史、そしてそれを取り入れた日本の戦後移民政策の歩みを否定するようなことはあってはならない。日本は国益を踏まえつつ、戦略的にやってきたなどという歴史の書き換えもダメだ。現実としてやってきたことは存在しており、それは決して「移民政策の不在」などではないが、しかし同時に多くの課題を抱えているのも事実である。そこを見誤ってはならない。(238ページより)
(※リンクをクリックするとアマゾンに飛びます)
■関連記事
外国人の派遣社員39.9万人は「異常な数」...ビザ別に見ると分かる就労制度の抜け穴・問題点
「中国人が10軒前後の豪邸所有」...理想の高級住宅地「芦屋・六麓荘」でいま何が起こっているか
[筆者]
印南敦史
1962年生まれ。東京都出身。作家、書評家。広告代理店勤務時代にライターとして活動開始。他に、ライフハッカー[日本版]、東洋経済オンライン、サライ.jpなどで連載を持つほか、「ダ・ヴィンチ」などにも寄稿。『遅読家のための読書術』(ダイヤモンド社)、『人と会っても疲れない コミュ障のための聴き方・話し方』(日本実業出版社)、『この世界の中心は、中央線なのかもしれない。』( 辰巳出版)など著作多数。2020年6月、日本一ネットにより「書評執筆本数日本一」に認定された。
米・イラン戦争で変わる地域紛争の「大前提」/石油危機を恐れるべき理由
