<仮設トイレは、単なる備品ではない...利用者の感情を汲み上げた快適なトイレは、SDGs、ジェンダー平等、離職率改善にも貢献している>

日本企業のたとえ小さな取り組みであっても、メディアが広く伝えていけば、共感を生み、新たなアイデアにつながり、社会課題の解決に近づいていく──。そのような発信の場をつくることをミッションに、ニューズウィーク日本版が立ち上げた「SDGsアワード」は今年、3年目を迎えました。


私たちは今年も、日本企業によるSDGsの取り組みを積極的に情報発信していきます。

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建設現場や災害時の避難所などに設置される仮設トイレは、これまで「臭い」「汚い」「暗い」などの理由から敬遠されがちだった。

実際、ある建設現場ではトイレの不快さから作業員が最寄りのコンビニまで移動して用を足すことが常態化し、その度の商品購入による金銭的負担やストレス、ひいては離職の原因にすらなっていたという。

仮設トイレは単なる備品ではなく、働く人の尊厳や健康、地域の印象までも左右する社会的インフラなのだ。しかし、その改善は発展途上と言わざるを得ない。

その問題に立ち向かい、仮設トイレから社会を変えようとしている企業がある。株式会社ビー・エス・ケイ(大阪市)だ。

仮設トイレでは初のグッドデザイン賞を受賞

ビー・エス・ケイは、「トイレロスのない社会」の実現を掲げ、快適性、衛生性、デザイン性を兼ね備えた仮設トイレの開発・普及を行っている。

事業の原点は、現場作業員の「トイレが臭くて使いたくない」「女性や若い職人が現場に来たがらない」という切実な声だ。現場の作業員が水分を控えてまでトイレを我慢する姿や、不衛生なトイレが原因で体調を崩す事例を目の当たりにし、「設備の質ひとつで働きやすさも人の尊厳も左右される」という現実を痛感した。

そして、「仮設トイレの環境が人の行動・健康・労働意欲に直結する」という視点に触れたことで、「設備として置くのではなく、社会インフラとして見直すべきではないか」という問題意識が社内で芽生えた。

2016年ごろから国土交通省と共に快適トイレの基準づくりを開始。建設現場の職人や現場監督、イベント・キャンプ場の運営者など、多方面から「我慢されるトイレ」の実態を集中的に調査した。

従来の「ただ置かれている箱」という概念を超えるため、LED照明・換気設計・室内高の拡張など、空間としての快適性を持たせた試作モデルの開発に着手した。

その後、試作、評価、改良を繰り返しながら快適な仮設トイレの開発と普及に努めていったという。

5年前から建設、イベント、観光、防災などの領域で本格的に導入されており、多くの自治体・施設管理者が「トイレひとつで、その場所の印象と安心感は大きく変わる」と認識するようになった。

ビー・エス・ケイの仮設トイレの内装
広さ・明るさ・快適な設備と耐久性を兼ね備えた、ビー・エス・ケイの仮設トイレの内装
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