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主人公・すずを、「嫁取り」の青年・周作が訪れる。祖母が仕立ててくれた着物を身にまとい、早くも結婚を迎えざるを得ない自身の人生について思う。 © 2019こうの史代・コアミックス / 「この世界の片隅に」製作委員会

この映画がアニメーションでなければならなかった理由は、舞台の一つである呉で、すずさんの家と軍港までをひとつながりに同じ次元で描く必要があったからです。

洗濯物を干している人と戦艦大和、といった人々の生活と戦争を同じ空間で表現しても、見る人が自然に受け入れられるのがアニメーションの力だと思います。

── 市民の日常がどのように継続し、どのように変化していったのかを描くことで、戦争のリアルを伝えようとしたのですね。本作は国際交流基金主催の映画祭や国際交流イベントをはじめ、世界各国で上映されていますが、海外ではどんな反応がありましたか?

片渕: 制作前にこうした企画について尋ねてみた海外の方からは「戦時下の日本人女性がどのように過ごしていたのか」が描かれていた点に興味を持っていただけたように感じました。

私自身、メキシコやフランス、アメリカなどに赴き、鑑賞された方々と言葉を交わす機会がありました。印象的だったのは、戦争というテーマに対する認識が国によって異なるということ。

カンボジア系フランス人の観客の方は「親から聞かされていたポル・ポトによる虐殺前の日常の話を思い出した」と話す人もいましたし、イラン人の方では「自分が子どもの頃に体験した戦争の様子と似ていた」と話す人もいて......。

私たちには「戦争」は80年前の過去の出来事と捉えがちですが、異なる受け止め方があることに心を揺さぶられました。

海外では「正しく伝わらなかった」?