今のロシア政府は、自分たちが生み出したこの危機への対処に苦慮している。「ブラックウィドウ」の問題は今や国営テレビでも公然と議論され、議会もしかるべき立法措置を講じようとしている。
だが結婚が形式上は合法で、既に弔慰金も支払われている場合、国にできることはほとんどない。裁判で結婚が無効とされても、当事者の男は既に死亡し、弔慰金は女性たちの手に渡っている。女性たちに問えるのは道徳的な責任のみで、刑事事件として立件するのは難しい。
怖い話だが、もっと怖いのは「ブラックウィドウ」を社会現象にしたロシアという国の在り方だ。社会の周縁部に意図して大量の貧困層を生み出し、彼らに「生きたいか? ならば命を売れ」という取引を持ちかける。女たちが国の弔慰金目当てに兵士と結婚するのは、それ以外に生きるすべが──女だけでなく男にとっても──ないからだ。
犯罪組織が戦死者を食い物にするのは、働くよりも死ぬほうが稼げるシステムがあればこそ。これはもう個々人の堕落ではなく、社会そのものの腐敗だ。死体が転がるたびに私腹を肥やせる者だけが勝ち残る。そんなシステムを、ロシア政府は巧妙に構築してきた。
こうなると法律も倫理も無力だ。国家そのものが腐っている。ロシアという国は、今や国民の死骸をあさるハイエナにすぎない。
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