インターネットのドメインネームを管理するNPOであるICANNが、トップレベル・ドメインを自由化すると決定した。

 トップレベル・ドメイン(TLD)とは、「.com」や「.org」「.gov」「.edu」など、インターネットのURLの最後についている部分のこと。TLDの数は、ドメインネームが生まれた当初から少しずつ増え、現在は22あるという。今回の決定は、その22種類に限らず、何でも好きな文字を組み合わせてTLDを登録していいというものである。

 このニュースを聞いて、「まるで錬金術みたいだな」と感じずにはおられない。つまり、ICANNの金儲け目的以外に、あんまり本質的な意味がないのではと思うのだ。

 ICANNがTLDを開放する理由は、「次世代のクリエイティビティーとインスピレーション」を刺激するため、ということになっている。確かに、あらかじめ定められたもの以外に、ハッと驚くようなTLDがいろいろ花咲く可能性はあるだろう。

 たとえば、「www.drink.coke」とか「www.ride.prius」とかいうのが出てきて、企業がそのブランド独自のおもしろいサイトを設けることもできるようになるかもしれない。あるいは、「.money」とか「.music」とかいったTLDを保有する新ビジネスが登場して、銀行やミュージシャンを束ねたサイトを運営することも可能になる。「.tokyo」や「.newyork」を運営して、地元の商売のうまいアグリゲート方法を考えるアントレプレナーが出てきてもおかしくない。TLDが自由化されるだけで、「へぇー、こんなビジネスの方法もあったか」と感心させられることも多々出現するだろう。

 だがその一方で、いろいろ不愉快なことが起こる予想もつくのである。そして、そちらの方が、実は多いのではないかと思う。

 たとえば、われわれユーザーにとっては、いやおうもなく混乱度が高まるだろう。

 というのも、現在われわれはTLDをその組織を判断する手がかりにしているからだ。「.com」ならば企業、「co.uk」ならばイギリスの企業、「.edu」ならば学校関係で、「.org」ならばたいていNPOのような組織と見分けがついた。

 それ以外にも、「whitehouse.gov」はホワイトハウスだけれども、他方「whitehouse.com」はよく知れた名前を借りて金儲けしてやろうとたくらむ怪しげな存在である、という判断も下していたわけだ。ところが、TLDの種類がほぼ無限に広がると、そうした判断が利かなくなる。

 また、現在のドメインネームでもすでに暗躍している「ドメイナー」が、また活性化することも想像に難くない。ドメイナーとは、ドメインネームを買いあさって、後で高く売りつける商売のこと。彼らはすでに、「.car」「.city」「.world」などをいち早く手に入れて、転売しようとたくらんでいるだろう。他人の商売に口出ししたくはないが、社会貢献度が低いこの手のビジネスが花咲くことには、いまひとつ感心できない。

 著作権争いも激化すると考えられている。「.toyota」や「.mcdonalds」は一体誰のものだろう、という問題だ。

 いずれにしても、ICANNはこれで莫大な売り上げを手にする。というのも、新しいTLDの登録には何と18万5000ドルの登録料と、年会費2万5000ドルがかかるからだ。現在のドメインネーム登録はほんの数10ドルで済んでいるのと比べると大きな違いである。世界的な企業は自社の名前のついたTLDを見逃すことはできないだろうから、かなりの数の登録が行われるはずだ。

 今やユーザーはURLを入力するのではなく、検索して求めるサイトにたどり着くことが多いが、それでも企業にとっては自社ブランドを守るのは必須だ。従って、この自由化は企業をやみくもにTLD確保に走らせるという一面もある。またこの高額な登録費は、個人やスモールビジネスなどは、ICANNが提唱する「次世代のクリエイティビティーとインスピレーション」からははじき出されているということを意味するわけで、これもちょっと残念だ。

 それにしても、URLの最後の数文字を開放するだけで大きな儲けが上げられるのだから、まさに錬金術というのにふさわしい。ICANNがこの資金をもとに、今後有益な方法でインターネットの発展を後押ししなければ「ウソ」である。