ヨーロッパのシリア難民に対する寛容と残酷が伝えられるなかで、当事者であるアラブ諸国の間では、当然の問いが投げかけられている。「なぜアラブ諸国は手をこまねいているんだ?」ヨーロッパが難民を受け入れるといっても、とどのつまりキリスト教徒ばかりを優先してるじゃないかとか、結局は安価な労働力に利用するだけのことだ、などと批判的に見る向きも、アラブ・メディアの中にはある。だいたい「アラブの春」でNATOがリビアに介入したから、リビアや北アフリカは無法地帯に陥ったのだ、これまで北アフリカから地中海を超えてヨーロッパに渡るアラブ人は、それほど多くはなかったのに、と指摘して、ヨーロッパが難民流入に困るのは自業自得だ、といる声もある。

 それでも、である。「アラブは何をしている」「なぜ我々の同胞をヨーロッパに押し付けてるんだ」と、自省する意見があちこちから噴出するのは、当然ともいえよう。13日にはイスラーム諸国機構が、16日にはGCCが緊急外相会議を開催して難民対応を議論したし、その批判を最も浴びる湾岸産油国は次々に、いやこれまででも結構難民支援の援助金を出しているんだよと、弁解を繰り返している。クウェートは13億ドルを供出したというし、サウジ紙によればUNHCRがサウジの難民支援を高く称賛しているというし、サウジ政府がいうには「難民というカテゴリーがないから難民を受け入れていないようにみえるが、実際にはたくさんのシリア人がサウジにはいるのだ」そうだ。とはいえ、9月15日から巡礼月が始まり、世界各国からイスラーム教徒がメッカにぞくぞくと集まっているにもかかわらず、シリア人の巡礼客は入国禁止となっている。

 問題は、「なにかしなくちゃ」と血気はやったアラブ・メディアの論理展開だ。アラブ、特に湾岸諸国の大手紙のオピニオン覧には、難民対策をなんとかしなければならない、対処療法だけではなく原因の核にあるシリア内戦をなんとかしなければならない、との指摘が相次ぐ。

 それは正しい。だが、その後に続く議論が問題なのだ。曰く、「この難民の大量発生の原因はアサド政権にある。だから難民問題の根本的解決のためにはアサド政権を倒さなければならない」。そしてアサド政権の背景にはイランがいて、「イランの革命防衛隊がさまざまな民族を動員して宗派的抹殺と住民の強制交換を行っている」 (シャルク・ル・アウサト紙)。こうした論調の流れのなかで、サウジはドイツのシリア難民向けに200件のモスクを建設する、と支援を発表している。