何より一連の出来事は、トランプ本人も自分が勝つかどうか分からなかった時期に起きた。しかも特に重要な部分は、16年10月の『アクセス・ハリウッド』スキャンダルでトランプの支持率が低下した後、民主党候補のヒラリー・クリントンの私用メール問題の再捜査について報じられるまでの短い間に起きている。

10月8日、テレビ番組『アクセス・ハリウッド』の収録中にトランプが下品な言葉で女性の話をしていたことが報じられ、陣営は混乱に陥った。トランプとの複数回の電話を経て3日後の11日、コーエンはダニエルズに口止め料を支払うためにペーパーカンパニー設立の手続きを始めた。

ところがトランプは、支払いを選挙後まで引き延ばし、払わずに済ませようと考えた。10月24日、26日、28日にトランプとコーエンが電話で協議を重ね、コーエンはトランプの命令でダニエルズ側と取引をまとめた。

10月26日、口止め料の13万ドルが、コーエンの個人口座からペーパーカンパニーに入金された。27日、コーエンからダニエルズの弁護士キース・デビッドソンに電信送金の手続きが取られた。

翌28日、クリントンが国務長官時代に公務で私用メールを使っていた問題でFBIが捜査を再開したことが報じられ、情勢は大きく変わった。その約10日後、トランプが大統領に当選した。

開票が進んでトランプの勝利が明らかになり始めた頃、デビッドソンはナショナル・エンクワイアラー紙の編集者ディラン・ハワードにメールを送った。

「私たちは何をしたんだ?」

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