振付をするジャケル・ナイト
これまで商業音楽分野の振り付けで活躍してきたナイトが舞台の世界へ JEREMY DANIEL-SLATE

――でも、ミュージックビデオと『ウィズ』のような作品では、比較対象となるオリジナル作品の有無という大きな違いがあるのでは?

今回、私たちクリエーティブチームは最初に2週間、1つの部屋に集まって、これまでリリースされた(同じ原作に基づく)作品全てを細かく検討した。そのとき、私たちは、大切な要素、誰もが大切に思っている要素は全て残そうと決めた。

見落とせないのは、『ウィズ』に(黒人の)喜びの要素が含まれていることだ。黒人の高い能力を表現し、「われわれは、心を折られて意気消沈する悲しい奴隷というだけではない」と思わせてくれる。

黒人だって、型破りなことや風変りなことができる。夢を持つこともできる。踊り、歌い、ハーモニーを生み出し、高度なテクニックを駆使し、カッコよくあることもできる。そう思わせてくれる。こうした要素のエッセンスは全て残すべきだと思っていた。

――今回のミュージカル版では、いくつか現代風のアレンジがなされている。フィリップ・ジョンソン・リチャードソン演じるブリキ男がヒップホップを披露したり、ウェイン・ブレイディ演じるウィズが80年代・90年代風のダンスを踊ったり。

こうしたアレンジのうち、あなたが最初から決めていたものと、出演者の強みを生かす狙いで決めたものは、それぞれどれくらいあるのか。

両方のパターンがある。もともと、ブリキ男はカッコよく描きたかった。オリジナルのミュージカルでは、ブリキ男はタップダンスしか踊らない。でも、タップダンスは、全身を使うイメージがあまりない。その点、今回の作品では、体全体を大きく動かして、興奮を表現したいと思った。しかも、それはフィルにもぴったり合っていた。

それに対し、ウェインのような(レジェンド級の)出演者もいる。この場合は、「ここでダンスのシーンになるんだけど、どんなことをやりたい?」と尋ねて、「90年代風のダンスがいいな」という返事が戻ってきた感じだった。

――(映画版でかかしを演じた)マイケル・ジャクソンは途方もなく大きな存在だ。映画で彼が歌った「ユー・キャント・ウィン」のようなナンバーでは、どれくらいオリジナルのミュージカルから着想を得て、どれくらい映画のマイケルから着想を得たのか。マイケルを意識した面があるように、私には感じられた。

最初の段階で、タップダンスを取り入れたい、ジャズっぽさを強めて古典のような感じにしたいと思った。その方向で素晴らしいナンバーが仕上がり、しばらくそれで公演していた。でも、途中で「映画版をもう少し参考にしてもいいかもしれないな」と思い直して、現在に至っている。

けれども、マイケルは人間とは言えないような人物だ。ロボットのような超人と言ってもいい。そのような人間のことは意識しないほうがいい。超えようとすれば、自滅するだけだ。それよりも、(マイケルの映画版の)精神を基に新しいものを作ろうとしたほうがいい。その試みは、成功したと思っている。

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