大谷陣営の説明が一変したのは、水原の不誠実な通訳に頼り切っていたためだ。大谷によれば、水原は「大谷とコミュニケーションを取っている」とし、「(大谷が)自分の借金を肩代わりした」という嘘を代理人らに伝えていた。この嘘が世間に広まったのは、大谷陣営が雇った広報の専門家が、嘘つきの張本人にメガホンを渡したせいでもある。

大谷と水原が試合直前まで仲良くしていた理由も分かった。大谷は当時、水原の賭博問題も、自分の口座から送金がなされていたことも知らなかった。事実を知ったのは、試合後に水原がチームに賭博問題を説明した後、改めて大谷と一対一で話をしたときだった。

当事者たちが韓国にいる間に、アメリカの弁護団が真相を突き止めたのは、大谷がすぐに連絡したからだ。水原は大谷と2人きりになったとき、自分に巨額の借金があり、大谷の口座から賭け屋に送金したことを告白したが、大谷は「やはりおかしい」と思い、「ドジャースの関係者や弁護士に連絡をした」と語っている。

なぜ水原が大谷の口座にアクセスできたのかといった疑問は残るが、これは捜査で明らかになるだろう。

それにしても驚きなのは、これまで矛盾する情報が飛び交っていたのは、全て水原が原因だったことだろう。彼は賭博依存症だっただけでなく、今回の問題について大谷が見聞きする情報を自分に都合良く管理できる立場にあった。

大谷がプライバシーをかたくなに守ってきたせいもあり、痛快なホームランを放ったり、打者を三振に仕留めたりする以外に、彼がいったいどういう人物なのかはほとんど知られていなかった。テレビの解説者も、彼がスポーツ賭博をやるような人物なのか、はたまた友人の借金を肩代わりしてやるような人物なのか、コメントしようがなかった。

大谷は今回、スポーツ賭博をしたこともなければ、誰かに賭けをさせたこともないと明言した。自分の口座から水原が賭け屋に送金をしていたことにも一切関わっていないという。もちろんそれは大谷の説明であって、真相ではない可能性もある。

だが、広報のプロに囲まれた若くてリッチなスポーツ選手が、自分の陣営から発信された嘘に翻弄された1週間の終わりに、改めてマイクに向かって嘘をつくなどということがあり得るだろうか。しかもそれが嘘だったと分かれば、スポーツ選手としてのキャリアも、法的立場も大打撃を受ける可能性がある。

大谷が3月25日の会見で話したことが100%事実でなかったとしたら、彼は通訳以外に変えなければならないことがある。

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