西欧が植民地大国だった頃は、理想化された「自由民主主義」が万能と見なされていた。冷戦後のアメリカでは新自由主義が全てに対する答えであり、東アジアでは「儒教的価値観」が、中国では「強い国家」がそうだった。これらの例では、成功の根拠とされた要因が最大の問題の原因だったことが後に露呈している。

停滞は深まり教訓が増える

中国の場合も、成功の政治的基盤が誤って解釈されている。いま最も一般的な誤謬の1つは、中国の成長は民主主義に対する権威主義の優位性を実証したというものだ。この結論はイデオロギー論争を活発化させ、「中国モデル」を「アメリカモデル」と対立させ、あたかも欧米の成功は民主主義のみに、中国の成功は独裁主義のみに頼っているかのように論じている。

実際には、鄧の時代に中国が成功したのは、鄧がワンマン支配から集団指導体制に代え、ドグマを否定して「事実から真実を追求する」文化を支持したからだ。同じ意味で、最近の経済失速は、習自身が個人的権力とイデオロギー統制を復活させたことが引き金となった部分もある。

中国から教訓を得るとき、あるいはあらゆる「成功」物語から教訓を得るとき、私たちは何を学ぶべきかを問うだけでなく、何を学んではいけないかも問うべきだ。鄧は、政治指導部の安定と制度的チェックのバランスが経済成長に必要な基盤であることを示した。賢明なマクロ経済政策と対外政策を組み合わせた適応力のあるガバナンスも重要だった。

しかし権力を一人の手に集中させることが解決策だと考えるべきではない。それは気まぐれと、政策の激しい転換を引き起こすリスクがある。

中国経済が停滞期に入るにつれ、発展とガバナンスについてより豊かな教訓が得られるに違いない。中国の軌跡は、たとえ鄧が遺したモデルのような独創的な解決策でも、永遠には続かないことを私たちに思い出させる。どの世代もどの発展段階も、新たな対応策を必要とする新たな問題に直面する。習はボトムアップの力ではなく、トップダウンの統制でそれらを封じ込められると証明したいのだ。だが今のところ、現実は習が誤っていることを証明している。

「コピペ」だけで効果が上がる解決策や、労せずしてリッチになれる手段は現実には転がっていない。最良の教訓は往々にして、絶えず変化する状況に正しい原則を適応させ、苦労の末に学んでいくしかない。

©Project Syndicate

231226P44_p44chinaeconomy_Ang-Yuen-Yuen.jpgイェンイェン・アン

YUEN YUEN ANG

著書に『中国の金ぴか時代』『中国はいかにして貧困の罠を抜け出したか』がある。
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