夏の電力消費のピークに向けて原子力発電所の再稼働が検討されているが、民主党のプロジェクトチームは慎重論を打ち出すなど、難航している。このままでは最悪の場合、停電などの事態も考えられる。電気料金の値上げも申請されており、省エネルギーによる生活防衛が大事になってきた。

 今までは省エネといえば、こまめに電灯を消したり、空調の設定温度を下げたりといった手作業で行なうのがほとんどだったが、最近はHEMS(家庭用エネルギー管理システム)と呼ばれる情報システムを使った省エネ機器が出てきた。たとえば東京ガスは、社宅で燃料電池や太陽電池などを情報ネットワークで結ぶHEMSをそなえた「スマートハウス」の実証実験を公開した。各部屋にはリアルタイムでエネルギーの使用量がわかる端末や電力を節約する装置がり、電気代が40%節約できるという。

 経済産業省も、HEMSの標準化に乗り出した。3月12日に開かれた「スマートメーター制度検討会」では、HEMS機器の規格とともに、その中核となるスマートメーター(電力使用量などを送信する電力計)の標準化も話し合われた。HEMSについては「エコーネット・ライト」で標準化する方針が確認されたが、スマートメーターについては電力会社の意見がまとまらず、先送りになった。

スマートメーター
省エネの切り札 欧米の家庭で導入が進むスマートメーター

 スマートメーターは、電力使用量などを刻々と知らせて省エネのための情報を提供する、HEMSの中核である。その規格が決まらず、電力会社が独自規格に配備すると、HEMSに送られる情報もバラバラになり、各地域ごとに別のシステムを設置しなければならない。これについては経産省も総務省も規格の統一を求めているが、電力会社は「料金体系が違う」などという理由で抵抗している。

 海外では、すでにスマートメーターの設置が進んでおり、特にヨーロッパではエネルギー節約システムの設置を求めるEU指令が出て、イタリアやスウェーデンなどでは全世帯にスマートメーターが設置されている。アメリカでも、オバマ政権の推進する「スマートグリッド」計画の一環としてスマートメーターが設置され、運用が始まっている。

 ところが日本では、肝心の電力計が1カ月に1回、人間が検針するアナログ型のままなので、HEMSが大きく立ち後れている。これは電力会社が電力を節約すると売り上げが落ちることをきらい、検針員が職を失うことに労働組合が反対してきたためだ。しかし原発事故後の計画停電騒動で、状況は一変した。労組も合理化に協力するようになり、電力会社もスマートメーターの設置に積極的になった。

 しかし経産省の決めたシステムでは、スマートメーターからHEMSに伝えられる情報は、30分ごとの電力量だけで、電圧も電流もわからない。契約電力50kW以下の小口電力の自由化は重要な課題だが、このまま電力会社が独自規格のスマートメーターを設置すると、他の独立系の発電会社はそれを使えないので、地域独占が固定化されてしまう。

 さらに問題なのは「エコーネット」だ。これは電力線通信として開発されたものだが、使い物にならないため、「ライト」は電力線に依存しないLAN(構内通信網)のプロトコルを規定しているだけだ。これは日本独自の技術なので、欧米で実用化されている規格と互換性がない。海外ではスマートメーターの情報をインターネットで共有してHEMSで利用するが、日本のスマートメーターもHEMSもインターネットとつながっていない。

 こういう奇妙な規格が決まるのは、電力会社や既存メーカーを集め、彼らの既得権を侵害しないことを条件にしているからだ。消費者の立場からみれば、すでに欧米で実用化している技術を導入するか、せめてそれと互換性のある規格にすれば、すぐにHEMSを導入できる。ところが経産省はエコーネットを「日の丸技術」として世界に売り込みたいので、海外の規格を認めない。

 本来はアメリカで始まっているように、電気もガスも水道も同じデータ形式にしてスマートメーターから無線インターネットに飛ばし、それをユーザーが用途に応じて選んで使えばいいのだ。供給側の都合で「ガラパゴス規格」を決めるのをやめ、消費者にとって何がベストかという観点からオープンな標準を決めれば、省エネは年間数兆円規模の大ビジネスになる。