<米政府機関下・世界最大の年金資金が、米政府が制裁を科した中国企業に流入。背景には制裁リストが共有されていない問題と、対中投資に前のめりな金融界との複雑な関係>

米連邦政府の何百万人もの職員が加入している年金プラン。その運用資金の一部が政府の制裁対象の中国企業に流入している可能性が本誌の調査であぶり出された。

アメリカの国家安全保障を脅かす恐れがあると見なされたか、強制労働で利益を得るなど少数民族に対する弾圧に深く加担している疑いが持たれる中国企業に、アメリカの公務員が退職後に備えてためた金の一部が流れている、ということだ。

運用資産総額7200億ドルで、世界最大の年金プランである「連邦公務員向け確定拠出型年金(TSP)」は、もともとは少数の手堅い運用商品を用意し、加入者がどれかを選んで掛け金を託す形態を取っていた。

だが2022年6月からその方式を残しつつ新たなオプションが導入され、加入者の選択肢が大幅に広がった。希望者は新たに開設されたポータル、「投資信託窓口(MFW)」にある5000以上のファンドの情報を比較検討して自分に合った運用プランを立てられるようになったのだ。

問題はこれらMFWのファンドの一部が中国株を買っていること。少なくとも9つの米政府の禁輸・監視リストに載った中国企業が投資対象になっていることが本誌の委嘱による調査で確認された(この調査では、超党派のNPO「豊かなアメリカのための連合」のデータを基に、ワシントンのコンサルティング会社キロ・アルファ・ストラテジーズが分析を行った)。

MFWのファンドが投資している中国企業には戦闘機のエンジンや軍艦のタービンなどを開発する軍需企業、中国北西部の新疆ウイグル自治区で当局が拘束した住民をただで酷使している疑いがある企業、アメリカの安全保障を脅かす偵察システムのメーカーなどが含まれている。

公務員のための年金プランであるTSPは連邦機関の「連邦退職貯蓄投資理事会(FRTIB)」の管理下に置かれている。にもかかわらずその運用資金の一部がこうした企業に流れている可能性があるのだ。これでは、米政府の対中制裁にどれだけ実効性があるのか疑わしい。

TSPの運用資金がどの程度制裁対象の企業に流れているかは不明だが、TSPのオプション導入は2つの問題を浮き彫りにした。

1つは、米政府の複数の制裁リストに対し、連邦政府の各機関の連携が取れていないこと。もう1つは、中国の人権問題や貿易ルール違反に厳しい態度で臨もうとする連邦政府と、依然として対中投資に前のめりな金融業界が緊張関係にあることだ。

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違法でなくても倫理的に問題
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