「犬がどのように考え、世界がどう見えているかを理解するのは難しい。なにしろ犬は、私たちに似ていると私たちが思うような方向に進化させられてきた」と彼女は言う。

「犬はある意味、人間の心理を模倣するような進化を遂げてきた。でも、犬が脳内で実際に人間をまねているわけではない。犬の脳内で何が起きているかを理解するには、人間の色眼鏡を外す必要があるが、それは私たち人間には難しい」

犬が言葉を理解し、人間の意図を読み取れることは分かった。でもエモリー大のバーンズは、まだ満足できない。あの究極の謎が解けていないからだ。愛犬ニュートンが自分を見つめるときの大きな目は、本当に愛情表現だったのか?

そこでバーンズは、ニュートン亡き後に飼ったテリア犬カリーに頑張ってもらい、fMRI(機能的磁気共鳴映像法)装置の中でじっとしていられるように訓練した。そして巨大で不気味なドーナツ形の装置にカリーを入れ、どんな状況で脳の報酬領域にある神経が最も激しく「発火」するかを観察した。

結果は明白だった。バーンズの優しい言葉を聞くと、カリーの報酬中枢は食べ物をもらったときと同じように明るく発火した。それはカリーが、好物の餌と同じくらい彼を愛していることの証しだった。きっとニュートンもそうだったに違いない。

そう、この件に関する限り愛犬家は科学者よりも正しかったのだ。

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PM IMAGES/GETTY IMAGES
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