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アリゾナ大学に犬認知力研究所を創設した進化生物学者で認知科学者のエバン・マクレーンによれば、この実験で分かったのは、犬には抽象的な概念を理解するだけでなく、全く異なる種の生物の心理にも反応する能力が備わっているということだ。

もっと言えば、犬の研究を通じて、人の社会性や、ここまでの文明を築き上げられた秘密を解き明かせる可能性もある。

人の喜怒哀楽を読み取る

犬は人のしぐさだけでなく、人の表情にも注意を払っている。

近年、犬は人の喜怒哀楽を見分けられることが研究によって明らかにされてきた。表情豊かな人の写真を見せられると、無表情の顔を見せられたときよりも、犬の心拍数は上がる。怒っている顔からは目をそむけ、不安そうな顔には関心を向ける。

盲導犬が目の見えない人の目となって交通事故を防ぎ、セラピー犬が心に傷を負った子や、凶悪犯罪で終身刑を言い渡された受刑者、高齢の認知症患者、試験勉強でストレスをためた学生の心を癒やせるのも、これで説明がつく。犬は人の感情を読み取り、それにふさわしい対応をすることができるのだ。

犬の理解力は、はるかに複雑な行動にも及んでいるとみられる。

人間の場合、人の性格を見分ける能力はもともと備わっており、早ければ生後5カ月で芽生える。エール大学で博士号を取得したザッカリー・シルバーは、俳優たちに「悪人」と「善人」役でペアを組ませ、犬が人の性格を見分けているかどうかについて実験を行った。

1人にはクリップボードを盗み、人に危害を加えるふりをしてもらい、もう1人にはフレンドリーな態度を示してもらい、探している人にクリップボードを渡すことにした。

その後、この2人は同時に、犬に餌を差し出した。すると実験に参加した犬37頭中の3分の2までが、フレンドリーな俳優の元に走ったという。

別の実験でも、人がいい加減な合図ばかり送っていると、いずれ犬はその人の命令に従わなくなるという結果が示されている。シルバーに言わせると、「社会的な知性に関して、犬はとても人間に近い」のだ。

犬には双方向コミュニケーションの能力も備わっているらしい。

「天才」犬は本当にいる?
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