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サイレント映画の衰退でジャック(左)が落ち目になる一方、マニーは出世を続ける ©2023 PARAMOUNT PICTURES. ALL RIGHTS RESERVED.

型破りな格好をする女性なのは伝わるが、彼女が自分をどう捉え、周りからどう見られているか、人物像の理解を助ける細やかな描写がおろそかになっている。

セクシーで情熱的な「赤い服の女」であるネリーは、自ら装いを決める女性というより、悲劇的な性的魅力を体現する存在でしかない。

奇妙なラストの解釈は

むらのある語り口や急ピッチの展開のツケは、物語が猛スピードで進行するうちに膨らんでいく。チャゼルは各場面のリズムに敏感な映画監督だが、ストーリー全体の構成には奇妙なほど無関心になることがある。その結果、退屈を感じることはないが、だんだん疲労感が募ってくる。

本作の幕切れは1952年のハリウッドだ。マニーは映画館で『雨に唄えば』を見ている。サイレント期からトーキーへの移り変わりを、はるかに健全な形で描いたミュージカル映画の傑作だ。

スクリーンを見つめるマニーの目の前に、ハリウッドの過去・現在・未来にまたがる(おそらくチャゼル自身の)ビジョンが現れる。

映画を発明したリュミエール兄弟の作品、ワーナー・ブラザースのアニメ映画、『オズの魔法使』『ターミネーター2』──短いカットが連続するモンタージュの終わり近くには、筆者の見違いでなければ、『バビロン』も登場する。

視点を大きく転換させる最後の展開は、自己満足的だと非難されてもおかしくない。だが個人的には、不完全だが心がこもり、技巧を尽くしたチャゼルの過去作の全てと同様、虚勢に満ちた終幕のモンタージュに称賛を送りたい。

それでも、物語性のない奇妙なエンディングに逸脱するまでの物語が、輪をかけて風変わりだったらよかったのに、と思わずにいられない。ありがちな業界内幕ものに収まらず、登場人物の小さな成長や変化が織り成す壮大なだけでない叙事詩だったら、と。

©2023 The Slate Group

BABYON

バビロン

監督╱デイミアン・チャゼル

主演/ブラッド・ピット、マーゴット・ロビー

日本公開は2月10日

【動画】映画『バビロン』本予告