アジアを歴訪して各地で共同声明を出したアメリカのオバマ大統領。東京での演説では、東京にいるのに中国向けの内容でした。それだけ日本より中国を重視しています。

 では、米中共同声明はどうだったのか。これを分析した記事が、本誌12月2日号の「米中共同声明の落とし穴」です。この記事は、「ニューズウィーク」オリジナルではなく、アメリカの外交専門誌「フォーリン・ポリシー」からの転載記事です。こういう記事も読めるのが、本誌のいいところです。

 この記事の筆者であるダニエル・ブルーメンソル氏は、オバマのアジア戦略に極めて批判的です。台湾とインドに関して、「オバマが中国の術中にはまっている」と強い調子で批判しています。

 このうち、インドの部分を読んでみましょう。氏は、インドが中国の覇権を阻むために毅然とした態度をとっていると評価しています。

「11月8日にチベット仏教の最高指導者ダライ・ラマ14世が中国が領有権を主張するインド北東部のアルナチャルプラデシュ州を訪れた際、インドは中国の圧力に毅然としていた。

 インドは2つの意味で中国を牽制した。まず、国内問題に干渉するな。ダライ・ラマはインド国内を自由に移動できる。そして、アルナチャルプラデシュはインドの領土である。国境付近に中国は軍事的圧力をかけているが、インドは屈していない。インド洋でも、インド海軍は中国が勢力圏を築くことを許していない」

 氏は、中国の対インド戦略は、インドを南アジアに縛りつけ、大国として台頭させないことだと見ています。そのために中国としてはパキスタンを支援し、インドがパキスタン問題に力を入れざるをえないことが必要だと分析しています。

 中国は以前からパキスタンへの支援を続けています。インドを一層台頭させないためにも、インドを「インド・パキスタン問題」の枠組みで扱うことをアメリカに認めさせることが重要であり、米中共同声明で、中国はそれに成功した、という分析です。

 インドと中国の関係についての、氏の分析は読ませます。この点については高く評価できますが、しかし、アメリカは中国の術中にはまった。とまで言えるのでしょうか。

 というのも、アメリカはアフガニスタンでの戦争に多大な犠牲を払っている最中だからです。アフガニスタンのタリバン掃討に関しては、パキスタン政府の協力が必須です。アメリカとしては、パキスタン対策が大きな課題です。インドに敵対心を抱くパキスタンを必要以上に刺激しないためにも、パキスタンと友好関係にある中国に対して、「南アジアの平和に米中が協力していこう」と呼びかけるのは、当然の態度ではないでしょうか。

 その点で、この記事は、いささか深読みすぎるように思えます。むしろオバマの外交戦略のアラ探しという色彩を感じてしまいます。