今年7月、旧ソ連圏のグルジアとウクライナに行ってきました。グルジアは、昨年8月、ロシアと戦火を交えた国。ウクライナは、ロシアから離れてヨーロッパに接近しようとして、ロシアとの対立が激化しています。そんな様子を取材に行ったのですが、そこで出会ったのが、アメリカのジョー・バイデン副大統領ご一行さまでした。

 私が直接会ったわけではなく、たまたまウクライナの首都キエフで副大統領の車列を見ただけなのですが。

 その直前、オバマ大統領は、ロシアのメドベージェフ大統領と会い、米ロ関係の改善を約束していました。これが、グルジア政府やウクライナ政府の懸念を掻き立てました。自分たちの味方だったはずのアメリカが、自分たちを見捨ててロシアと接近しようとしているのではないかと疑念を抱いたのですね。

 そこでバイデン副大統領が急遽グルジアとウクライナに飛び、「友好関係に変わりはないよ」と宥めたのですね。

 そんな副大統領の立場を、本誌日本版10月28日号が取り上げています。題して「不都合な真実を語る男ジョー・バイデン」。「不都合な真実」といえば、アル・ゴア元副大統領の映画と著作の名前。同じ副大統領ということでヒネリを効かせたタイトルになっていますが、本文を読むと、オバマに対して不都合なことでもズケズケと言っている、というわけです。

 この中に、以下のような文章が出てきます。

「対ロシア関係では、2人がアメとムチの役割を分担している。良好な感情に基づいてロシアと新しい時代を築きたいと宣言するのはオバマの役目。ただしロシアの抱く領土拡張の野望と人権侵害の現状は厳しく見張っている、と付言するのはバイデンの役目だ」

 私がウクライナでバイデンを見たのは、まさにこの立場を実行していたというわけです。

 アメリカの副大統領というのは、存在感が薄いものです。大統領は毎日大きく取り上げられるのに、副大統領に関しては、失言でもしない限り、ニュースに登場しません。

 ところが、この記事では、オバマとバイデンの関係を活写しています。オバマ政権が、アフガニスタン戦略に傾注しようとしたとき、バイデン副大統領は、こう言ったというのです。

「アルカイダは、ほぼ全員がパキスタンにいる。そのパキスタンには核兵器がある。それでもわれわれは、パキスタン向けの1ドルごとにアフガニスタンで30ドルを費やしている。これは戦略的に正しいだろうか?」

 これで会議の流れが変わったというのです。

 過去には自分の仕事を「バケツ1杯の小便ほどの価値もない」と表現した副大統領もいましたが、どうして、どうして、バイデンは価値ある仕事をしているようです。

 ふだん日本でのニュースでは取り上げられない副大統領の仕事ぶり。それを知ることができるのも、この雑誌の価値あるところです。