<安全な場所に逃れても口を開こうとせず、将来的な平均身長や生涯賃金にも影響を及ぼす「戦争」という体験。彼らの笑顔を取り戻すのに必要なケアとは>

なぜママたちと一緒におうちを出ることになったの? ユリア・ミチャエワの6歳の娘ソフィアはそう聞かれても答えようとしない。

普段は元気いっぱいの幼稚園児だ。お気に入りのキャラクターに扮して遊ぶのが大好きで、ロシアが祖国ウクライナに侵攻する2週間前にはバレエの発表会でキツネ役を演じたばかりだった。そんなソフィアも戦争の話となると黙り込み、自分がいる場で誰かがその話をすることも嫌がる。

母親のユリアは先日、2時間近くを割いて脱出までの凄絶な体験を本誌に語ってくれた。語り終えると彼女は逆に記者に質問した。

公園に友達の笑い声ではなく、近くに落ちたミサイルの爆発音が響いたら? 大切なぬいぐるみやオモチャばかりか、ガーフィールドという名の猫とサーシャという名の大好きなパパと別れて、祖国を出ることになったら?

それでもその子は大丈夫なの? 子供はどのくらい恐怖や悲しみに耐えられるものなの?

ユリアの問いに対する誠実な答えは、必ずしも彼女が、そしてウクライナの親たちが聞きたがるようなものではない。

長引く血なまぐさい紛争で家を追われた子供たち──ウクライナだけでなく南スーダン、イエメン、アフガニスタン、シリアなどの子供たちは、安全な場所に避難すればそれで安心とはいかない。

戦火を生き延びた人々に関する膨大な文献、古くは1944年にさかのぼる調査結果は、戦争が子供たちの心に深い傷を残すことを示している。

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UNICEF/UN0615963/HROM

高齢になっても目に見えない傷に苦しむ

戦地で過ごす時間が長いほど、大人になってから病気になったり、メンタルの不調を抱える確率が高くなる。戦争は平均身長の低下や教育の中断を招き、高度な職業能力の習得を妨げ、生涯賃金を減少させかねない。

幼い日に戦争を体験した人は高齢になっても目に見えない傷に苦しみ続けることがあるのだ。

それなのに現実はどうか。NGO「セーブ・ザ・チルドレン」の最新報告書によると、2020年に紛争地域で暮らす子供の数は過去20年で最多の4億5000万人以上に達した。世界の子供6人に1人の割合だ。しかも、これはロシアがウクライナに侵攻する前の数字である。

ウクライナの人口は4400万人。侵攻後数週間で、その3分の1、オランダの人口にほぼ匹敵する推定1500万人が難民となった。これは欧州大陸では過去75年余りで最大の数字で、その90%超が女性と子供だ。

ウクライナの子供の60%が家を追われたと、ユニセフ(国連児童基金)は推測している。国外に脱出した子供は200万人、国内に避難した子供は250万人に上るとみられる。

母親の手を握りしめ、そばを離れなかった