前回に引き続いてデトロイト取材の話から。

 デトロイトで最後に立ち寄ったのはフォードの城下町、デアボーン。街に近づくとアラビア語の看板が目立ち始める。ここはアメリカでも最もアラブ系の多い街なのだ。20世紀初め、自動車を作り始めたフォードは組立工にレバノンやシリアからの移民を雇い入れたからだ。

 現在、アラブ系アメリカ人の人口は約110万人。全人口の0・4パーセントほどだが、錚々たる著名人を輩出している。デアボーンの市庁舎前に建つアラブ系アメリカ人博物館に入ると、アラブ系の偉人たちの展示がある。アップルのスティーブ・ジョブズ(シリア系)、歌手のポール・アンカ(レバノン&シリア)、ホワイトハウス記者ヘレン・トーマス(レバノン)、2000年の大統領候補だったラルフ・ネイダー(レバノン)、それに俳優のベン・アフレックもレバノン系だ。

 ちなみにウチの近所のベイエリアにも多くのアラブ系が住んでいる。前住んでいた家のお隣さんだったマレックちゃんという少女のパパはクェート系でママはイラン系だった。ママはガソリンスタンドを経営していた。中東やアフガン、インド系には酒屋やコンビニ、ガソリンスタンドの経営者が多い。マレックちゃんのパパは「ハウリング・モンキー」というエネルギー・ドリンクを企画販売しているビジネスマンだった。「ビタミンとカフェインと高麗人参も入ってるよ」とのこと。

 マレックちゃんのママは「イランはペルシャ系だからアラブと違うのよ」と言っていた。ペルシャ人はコーカソイド(白人)だから人種的にも違うのだが、そういうことはアメリカでも知らない人のほうが多い。特に9・11テロの後はアラブもイランもアフガン(アジア)もイスラムのテロリストとごっちゃにしがちだ。実際はアラブ系アメリカ人の6割以上はキリスト教徒なのだが。

「飛行機に乗ろうとするたびにオレだけ必ずボディチェックされるんだ」

 エジプト系コメディアンのアフメド・アフメドは空港での苦労話が持ちネタ。

「係員がオレのパスポートを読み上げ『アフメドさん』と言っただけで、周りの客は真っ青。『彼、メキシコ系かと思ってたのに! この飛行機を乗っ取る気ね!』って顔しやがる」

 インターネットで自分の本名を検索すると指名手配のテロリストが出てくるので嫌になる、と言う。

「でも、相手も嫌だろうな。『検索したらコメディアンが出てきた。俺はお笑いじゃない! テロリストだ!』って」

 イラン系のコメディアン、マズ・ジョブラニのネタはやっぱり「ペルシャはアラブと違う!」

「僕はねえ、ペルシャですから。猫ちゃんみたいに可愛いの。でも、ガソリンの値段が上がった理由を僕に聞かないで!」

 ジョブラニは俳優としても数多くのTVドラマに出演しているが、中東系だとテロリストの役ばかり回ってくるとボヤく。

「飛行機のパイロット役は絶対に回ってこないね!」

 アラブ系やイラン系のコメディアンたちはグループを作って活動している。その名も「悪の枢軸」。シャレがキツい!