一方の民主党の側ですが、オバマ=クリントン路線に連なる穏健派は、依然としてグローバリズムに最適化したアメリカは知的産業のチャンピオンであればいいという従来政策を修正できていません。またマムダニNY市長などの民主党左派には、雇用のためにはAIを規制すべきというようなアンチ・イノベーションの意見があります。

そう考えると、AI開発は推進しつつ、製造業回帰、ブルーカラー優遇という現政権の路線には十分に検討の余地が出てくるわけで、好景気のもとでの雇用低迷という現象は、そうした議論との整合性が出てきます。そう考えると、政権がパウエル議長と政策の綱引きをしていることは、せっかく重要な議論を行って21世紀のアメリカの産業構造を見直すチャンスであるのに、何とも不毛な争いを続けているという印象があります。

政治的なライバルである民主党穏健派は、AI革命のインパクトについて十分に理解できず、グローバリズムに対する態度も曖昧です。その結果として、Z世代の雇用不安に対して何の答えも提示できていません。第二期のトランプ政権は、そのような真剣な現状への不満、将来への不安を抱えたZ世代に支持されて成立した面があります。だからこそ、好況下の雇用低迷という現状をどう評価するかという議論は重要なのです。

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