国境を封鎖してからの2年4カ月の間、北朝鮮はアメリカや韓国との外交からも距離を置いてきた。この傾向はパンデミック以前からみられるため、2019年2月にハノイで開催された米朝首脳会談が不調に終わったことを受けた戦略的な再調整の意味合いが強いだろう。だがパンデミック期間を通じて北朝鮮政府は、諸外国からの支援にはウイルス汚染のリスクが付き物という考えから、以前にも増して孤立するようになったようだ。

しかし今回、北朝鮮で新型コロナウイルスの感染が拡大したことで、金正恩が外部からの支援を受け入れる可能性は、以前よりも高まっている。北朝鮮は「自立」を掲げながらも、これまでも繰り返し諸外国からの支援の申し出を受け入れてきた。不況を理由に、韓国とアメリカからの支援を受け入れた過去もある。北朝鮮がCOVAXによって割り当てられたアストラゼネカ製のウイルスベクターワクチンを受け入れてこなかったのは、米国製のmRNAワクチンが欲しかったことも一因だ。

韓国の尹錫悦・新大統領は、北朝鮮に対して、必要とあれば新型コロナウイルス関連の支援を惜しまない考えだと述べている。アメリカのジョー・バイデン政権も、ワクチン接種を促進するために、北朝鮮に国境封鎖の解除を促している。過去にはこうした支援の申し出を拒否してきた北朝鮮だが、危機が悪化すれば、その姿勢も変わる可能性がある。

北朝鮮は近く7度目の核実験を行うとみられているし、ミサイル実験も続いているが、それでも米韓両国は新型コロナ対策で積極的に手を差し伸べるべきだ。危機の北朝鮮と付き合う上で守るべき最初の原則は、無実の市民がパンデミックの犠牲になることを最小限に止めるということだ。そうすれば、対話と信頼が生まれ、核やミサイル問題についての交渉を再開する気運も生まれるだろう。

From Foreign Policy Magazine

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