端末数で及ばないが、公共スポットで利用者急増

ただ、同じ「ユーザー数」とはいえ両者は若干異なる指標であり、厳密には単純に比較することができない。世界ユーザー数(契約数)は14万5000人だが、ひとつの家庭や施設などで複数のユーザーが利用すれば、実質的な利用者の数はこれまでにも15万を超えていたことになる。

他方、衛星通信という特性上、非常用に契約したが常用していないユーザーも一定数見込まれる。これを除外すると、実際のアクティブユーザーは15万を割り込んでいても不思議ではない。

一方でウクライナに寄贈された端末は1500台から数千台の規模であり、端末数では世界計に大きく劣る。しかし、公に解放された端末を多くの市民がシェアすることで、1日のアクティブユーザーが15万人にまで急増した。

フョードロフ氏は5月8日のツイートで、光ファイバーが断絶した地区に開設された、スターリンクによる応急の通信スポットを取り上げている。こうした通信スポットに関しては、毎日は向かえないという利用者も多いと考えられる。数日おきに利用している住民も含めると、合計利用者数は1日あたり利用者の15万人を大きく超え、さらに膨らむ公算が高い。

このような差異から、世界契約数の14万5000とウクライナのアクティブユーザー15万人との比較は、かなり乱暴な計算となる。とはいえ、わずか2ヶ月強での急伸は、現地での極めて高い需要を示すひとつの目安になりそうだ。

ITが復旧を支援

端末数の少ない当初こそ軍や病院など重要施設にのみ導入されていたスターリンクだが、現在では一般的な市民の生活基盤となっている。ウクライナは侵攻以前から政府機能のデジタル化を推進してきた。

政府公式アプリの「Diia(ディーア)」は、法的効力をもつ身分証、被災補償の申請、受信困難地域でのTV視聴など、戦禍でも有効な70以上の機能を備え、1500万人以上の国民に利用されている。このような需要も、スターリンクの衛星通信への需要を後押ししたとみられる。

スターリンクはさらに、携帯の基地局が多く倒壊し、受信エリア外となった地域での電話通信をバックアップしている。ウクライナ・ボーダフォン社がスターリンクをバックホール回線(中継回線)として活用し、可搬機器を通じて4Gおよび2Gに変換して携帯の電波を送出している。

スターリンクのアプリは3月の時点ですでに、主としてウクライナからの需要により、世界で最も多くダウンロードされたアプリとなっていた。米ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、3月13日にAppleのApp StoreおよびGoogleのGoogle Playの合計で2万1000回のダウンロードを記録し、「一日で世界で最もインストールされた」と報じている。

関連して、同じくマスク氏が率いるテスラ社は、ソーラー発電システムとバッテリーを統合した「Powerwall」をウクライナに寄贈した。2つの救急医院の非常用予備電源として稼働が始まる。

破壊の限りを尽くされたウクライナの街角で、先端技術を積極的に取り入れながら、生活の復旧が試みられているようだ。

動画:ウクライナで急成長するスターリンク